国際移住者デーに移民労働者の保護を訴えるアジア紙
「送金の英雄たち」の行き先の多様化と持続的な投資を

  • 2026/1/23

 毎年12月18日は、国際移住者デーに定められている。国連のアントニオ・グテーレス事務総長によれば、2014年以降、陸路および海路において判明しているだけで7万人近くの移民が死亡または行方不明になっているという。

レバノンの雇用主のために昼食を準備している南アジアからの移民労働者© John Owens for VOA /wikimediacommons

「脆弱な市民層」を危険から守れ

 バングラデシュの英字紙デイリースターは2025年12月18日、「われわれは送金の英雄たちを守らなければならない」と題した社説を掲載した。

 バングラデシュは、移住労働者の送り出し国の一つだ。社説によると、2024年度、同国は過去最高の303億ドルあまりを海外から受け取ったという。社説は、「海外送金はわが国の外貨準備の大部分を占めており、国際収支を安定させつつ、数百万世帯を支えている」と、その意義を強調する。その一方で、社説は、「移住労働者たちが、危険な移住経路によってたどり着いた先で、搾取をはじめ困難な状況下に置かれたまま放置されることの多い、国内で最も脆弱な市民層」だと指摘する。

 多くの労働者たちは、政府が設定した上限を大幅に超える手数料を仲介者などから請求され、渡航先では約束よりも低い賃金や過酷な労働条件を強いられるほか、なかには「聞いていた仕事そのものが存在しないケース」すらある。また、危険な海上移動を強いられたり、誘拐されて家族に法外な身代金を要求されたりする事件も多発しているという。

 こうした搾取や被害の背景として、社説は、バングラデシュのほとんどの移民労働者の技能が低く、非熟練労働者であるため、低賃金で雇われていることを挙げる。「バングラデシュ人労働者を最も多く受け入れている国々が、必ずしも最大の送金源とは限らない。労働者が少なくても移民の技能レベルが高ければ、送金額は大きい」と、社説は指摘する。

 また、こうした状態を踏まえ、社説は「移民労働者の福祉と保護に注力し、違法な仲介業などを一掃することが必要」だと訴える。同時に、移民労働者の行先を多様化することも重要で、そのためには世界的に認められる技能や語学、資格の習得などに対して持続的に投資することが必要だと主張した。

自身と家族を貧困から救っている移住労働の女性たち       

 スリランカでも2025年1月から11月までの海外送金受入額が約60億ドルに達し、前年同期比で約2割増となった。スリランカの英字紙デイリーニューズは、2025年12月17日付の社説でこの傾向を歓迎するとともに、「海外送金は扶養家族のみならず、経済にとっても大きな恩恵となっている」と述べた。

 社説によれば、スリランカからの出稼ぎ労働者は、1970年代半ばに中東で雇用機会が増大したことを機に増加し始めたという。「多くの若い女性たちが中東で職を得たことで、自身と家族の生活を向上させる道が開くことができた」と社説は振り返る。女性たちの業務内容については、批判的な意見もあったというが、こうした女性たちの移住労働によって子どもたちの教育が可能になり、それが現在の若者たちを貧困から救っている、と社説は主張する。

 スリランカの移住労働者についても、バングラデシュと同様の問題が存在していると思われるが、この社説はそこには触れず、彼らが母国にいかに貢献しているか強調し、高く評価する記事になっている。

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 アジアの移民大国、フィリピンでも、移住労働者は「国家の英雄」と呼ばれているほど重要な存在だ。クリスマスシーズンに帰国する移住労働者らを、大統領が空港まで出向いて迎えることもあるほどだ。

 その一方で、国連やバングラデシュ紙が指摘するように、移住労働者にはさまざまな危険もつきまとう。世界の経済が、移住労働者なしには成立しえない時代、彼らの危険は、すなわちわれわれの危険であることを認識する必要があるだろう。

 

(原文)

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/we-must-protect-our-remittance-heroes-4060921

スリランカ:

https://dailynews.lk/2025/12/17/editorial/916446/a-welcome-development-11/

 

 

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