ASEANの指導者たちよ、今こそ行動を
新型コロナの影響で延期されていた首脳会議がオンラインで開催

  • 2020/7/3

6月26日、新型コロナウイルスの影響で2カ月近く延期されていた東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議が開かれた。各国が入国規制をしていることを踏まえ、会議は初めて「バーチャル」で開催された。ASEAN創設時からのメンバーであるタイの英字紙・バンコクポストは、26日付の社説でこの話題をとりあげている。

2020年6月26日、オンラインで開催された第36回ASEAN首脳会議で挨拶するベトナムのグエン・スアン・フック首相) (c) 代表撮影/ロイター/アフロ

共同体ビジョンの折り返し点

 東南アジア10カ国で構成されるASEANは、年に一度、首脳、閣僚、実務協議など、レベルごとに多くの会議を開催している。議長国は持ち回り制で、2020年はベトナムが務めている。

 5年前の2015年、ASEAN諸国は今後のあるべき姿について議論し、「共同体」という選択をした。「政治・安全保障共同体」、「経済共同体」、「社会・文化共同体」から成る「ASEAN共同体」の構築を掲げ、互いに統合し、グローバル化の時代を生き抜こうと決断したのだ。そんなASEAN共同体にとって最初の10年間の方向性を示すものとして、同年、採択されたのが「ASEAN共同体ビジョン2025」である。

 社説は、「このビジョンの折り返し点にあたる今年は、ASEANがビジョンをどれだけ実現できているか検証する絶好のタイミングである。新型コロナウイルスの感染拡大や、それに伴う経済の落ち込みなどによって、各国の首脳陣は内側を向きがちで、自国の危機を乗り越えることが最優先になっている。しかし、だからこそ、コロナ危機はASEAN諸国に対し、今一度、共同体として団結し、協力し、人間の安全保障という枠組みを構築するチャンスであるとも言える」と述べ、各国がこの危機を前向きにとらえるべきだ、という視点を提示する。

 今回の首脳会議では、4月に開かれた外相会議で合意された「ASEAN新型コロナウイルス対策基金」の設立について協議が行われる。この基金の原資はASEAN開発基金などから拠出されるため、当初、ASEAN諸国の中にはこの基金に消極的な声もあったという。しかし、社説は、「この基金の長期的な目的は、公衆衛生上の緊急事態が発生した際にASEANの対応能力の向上を強化することである。それは、域内6億5,400万人の人々の暮らしの一層の安全を目指すことにつながる」と述べ、重要性を強調する。

国境を越える課題への対応

 さらに、域内貿易の自由化も課題だ。ASEANは域内貿易の関税をゼロに近づける取り組みを進めているうえ、サービス貿易の自由化も進めている。「それでも、非関税障壁の撤廃については、さらなる取り組みが必要だ」と、社説は指摘する。「相互の一層の協力推進のために、この問題は避けられない。今年の首脳会議で“団結し、即応するASEAN”というメッセージを掲げるなら、ぜひとも解消しなくてはならない」

 またASEANは、域外国である中国を含め、くすぶり続ける「南シナ海領有権問題」を抱えている上、ミャンマーのロヒンギャをめぐる問題も喫緊の対応が求められている。「さらに、新型コロナウイルスを受けて深刻さを増す米国と中国の対立構造の中で、ASEANがどうバランスを保っていくのかも、重要な課題の一つだ」と、社説は指摘する。

 その上で社説は、新たなASEANの課題として移民労働者の保護を挙げる。社説は、「国境を越える移民労働者たちは、過去数十年にわたってこの地域の経済発展を支えてきた存在だ。彼らは今、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で仕事を失い、たくわえもないまま故郷に帰らざるを得ない状況にあり、保護が必要だ」

 ASEAN諸国の指導者たちは、半世紀余りにわたって、毎年、会合を開いては一堂に会してきた。ある加盟国高官は、「協議内容にはっきりとした前進が見られなくても、隣国同士の対立関係が深まっていても、各国の指導者が毎年必ず顔を合わせていること自体が貴重だ」と発言した。移民労働者、モノ・サービスの貿易、感染症、難民。今、ASEAN会合の場で協議の最重要事項となっている問題は、いずれも特定の国だけのものではなく、国境を越え、域内全体で向き合うべきものばかりだ。社説が指摘する通り、今こそ「共同体」の本当の意義を考えるときなのかもしれない。

 

(原文https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/1941144/asean-must-walk-the-walk)

 

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