インド洋津波から20年 22万人超の犠牲から学ぶ国境を超えた災害対策
27カ国に張り巡らされた津波警報システム 防災教育の必要性も
- 2025/2/7
タイやインドネシア、スリランカなど14カ国で22万人を超える人々が犠牲になった2004年のスマトラ沖大地震・インド洋津波から、2024年12月26日で20年が過ぎた。人命を奪っただけでなく、社会にも壊滅的な打撃を与えた大災害であったが、被災地は未曽有の災禍からさまざまなことを学び、備えを進めている。
いまだ6,800万人が被災の危険性
タイの英字紙ネーションは2024年12月26日、「あれから20年後 進化したアジア太平洋地域の津波対策」と題した記事を掲載した。この記事は、国連のアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)のアルミダ・サルシア・アリシャバナ事務局長をはじめ、行政や専門家への取材を基にしたものだ。
アリシャバナ氏は、「世界を震撼させた大災厄が、災害への備えにおいて前例のない世界的な連帯と協力、そして革新をもたらした」と話している。記事によると、2004年のインド洋津波の後に「インド洋津波警報システム」が設立されたことで、27カ国の警報センターが地震発生から10~15分以内に津波の脅威に関する警報を受け取ることが可能になったという。特にタイでは警報システムの充実に力を入れており、定期的な避難訓練、複数の言語による警報システムを導入しているほか、ビーチ沿いには避難用シェルターが設置され、高台への避難経路標識も配備しているという。
しかし、課題もある。ESCAPの推定によると、アジア太平洋地域の43カ国において、約6,800万人が依然として津波のリスクにさらされているというのだ。「インド洋沿岸だけを見ても、海岸線沿いに位置する1,213カ所の教育施設、1,450カ所の医療施設、140カ所の発電所、1,217カ所の海港が危険にさらされている」と、記事は指摘する。
記事は「さらに、気候変動はこうした懸念を深刻化させ、水害発生の頻度と深刻さを増大させている」と、警鐘を鳴らしている。
日本をお手本に防災能力の強化を
甚大な被害を受けたスリランカの英字紙デイリースターも、2024年12月26日付で「津波:20年」と題した社説を掲載した。
「犠牲者の数で言えば、自然災害としては新型コロナのパンデミックに次いで過去2番目だが、人類の悲劇という観点では、津波はパンデミックよりも私たちの心に深く刻まれている」
社説は、20年前には「津波」という言葉さえ知らなかった人々が、今はその危険性を十分に認識するようになった、と指摘した。そして、甚大な被害をもたらした一つの要因は「早期警戒の欠如」だったと指摘し、「スリランカでもこの20年間にさまざまな早期警戒システムが発達した」と振り返る。
「津波警報システムに関する知識はすでに私たちの心に深く刻まれており、沿岸地域の住民は、アジアのどこかで海底地震が発生したというニュースを聞くと高台に避難できるように心の準備をする。だが、まだ教育は十分とは言えない。チリや日本などの国々を手本として、小学生に津波避難訓練を義務付けることから始めるべきだ」。社説はこう訴え、防潮堤などの津波対策研究についても日本の事例を詳細に紹介している。
そのうえで社説は、「2004年の津波が私たちに残した最も永続的な遺産は、社会における災害対応と防災能力の向上、そして環境と気候に対する、より敏感な対応力であるべきだ」と主張している。
(原文)
タイ:
https://www.nationthailand.com/news/general/40044429
スリランカ:
https://www.dailynews.lk/2024/12/26/editorial/694759/tsunami-20-years-on/