イランから広がる「スカーフデモ」と米国社会
西海岸を中心に市民から大統領まで沸き上がる抗議の声
- 2022/11/1
それでも崩壊しない体制
このように、米国内のイラン当局への抗議活動は、草の根から大統領に至るまで盛り上がっている。イランに対する米国民の関心も、近年になく高まっている。政府間で行われる核合意交渉や原油価格といった抽象的なテーマではなく、若い女性が権威主義的な政権の手によって殺されたという認識が、一般の人たちの心を揺さぶったからであろう。
さらに、アミーニーさんの死後40日が経っても関心の低下が見られず、米国内の抗議活動が大規模に続いていることも異例だ。
しかし、デモの参加者からは、半ばあきらめの声も聞こえてくる。44年前にイランを後にし、今回、ロサンゼルスで抗議行進に参加していた女性のショーヘレー氏は、「事態が変わることを期待している。だが、頭と心のどこかで、どうせ何も変わらないと思っている自分がいる」と、心情を吐露した。
1979年の革命以来、多くの反体制活動家が希望のある新イランを夢見て闘ってきたが、体制は今日までびくともしなかった。今回の「アミーニー事件」では、デモがイラン国内にとどまらず、米国をはじめ世界各国に拡散したうえ、持続している。その意味では大きな前進だと言ってよいだろう。
だが、この先の道もまだまだ遠いことは事実だ。イランの人々、そして国外のイラン人やイラン系の人々の自由を求める活動は、今後も根気よく続いていくと思われる。