ベトナムの都市交通はカオスからの脱却なるか
環境にやさしいスマートシティを目指して
- 2022/4/5
電気バスやレンタル自転車も登場
今年3月初頭、鮮やかな緑色のバスがホーチミン中心部のターミナルを周回していた。同市で初めて導入された大型電気バスだ。市内と郊外を結ぶバスは全部で12車両(各67席)あり、朝5時から夜9時ごろまで約20分間隔で、日に94便が運行している。
システムと車両を提供しているのは、ベトナム最大のコングロマリット企業「Vin group」だ。不動産やリゾート開発をはじめ、ヘルスケア、教育、自動車・バイク、農業、小売など、多岐に渡る事業を展開する。また、運営は、系列企業でスマートシティ事業を手掛ける「Vinbus Ecology Transport Services」が担っている。同社は電子チケットのシステム整備を進め、将来的には、他のバス路線や都市鉄道でも使えるようにすることを目指すという。
ホーチミン市にはすでに126のバス路線があり、過去には電気バスも試験的に運行されたものの、1台あたり15座席しかなく、運行も市の中心部に限られたため、本格導入には至らなかった。今後、空港や大型ショッピングモール、バスターミナルなど、需要が高い目的地を結ぶ路線を増やす計画だそうだ。
また、コロナによる外出自粛も相まって交通量が若干少なくなったホーチミンの中心部で2021年12月に始まったのが、レンタル電動自転車だ。専用アプリを通じて、貸し出し手続きや利用可能なステーション(現時点で40カ所あまり)のチェックができる。料金は、30分あたり5000ドン(約25円)で、支払いもアプリ上で行うため、オンライン口座が必要だ。バイクのスピード感に慣れた若者たちにとっては、のんびりと散策を楽しみ、路地裏の店や風景を再発見したりできる自転車が、かえって新鮮らしい。さらに、自転車を入れて街並みを撮影するなど、新しい「映え」アイテムとしても、親しまれているようだ。
ハノイでも、今年3月から同じような取り組みが始まっている。運用される1000台のうち、半数が電動アシスト付きで、レンタル料は1時間2万ドン(約100円)。今年度中に専用ステーションを70〜80カ所に増やし、都市鉄道の駅に隣接させることで、鉄道利用の増加につなげたいねらいだ。
道路渋滞のカオスな光景はもうしばらく続くかもしれないが、大量輸送が可能な鉄道と、個々の移動の面白さを発見できる自転車を結び付ける試みは、利用する人に新たな発見を与え、着実に変化をもたらすはずだ。
都市交通の利便性アップと環境にやさしい取り組みは、今、まさに両輪で進みつつある。