東南アジアで育まれるクリエイティブ精神
カンボジアとラオスのアーティストの場合

  • 2020/6/28

コミュニケーション力が切り開いたキャリア

 ラオスの首都ビエンチャンの中心部から車を40分ほど南東に向かって走らせる。途中、舗装がなくなってからはガタガタ道を進んでいくと、のどかな景色の中に、突如、周囲とは明らかな異彩を放つカラフルな家が現れた。

ラオスの芸術家、スーリヤ・ブミポン氏の自宅兼スタジオ(筆者提供)

 ラオスの芸術家であり、アニメーション監督であるスーリヤ・プミボン氏の自宅兼スタジオだ。粘土を動かして作るアニメーションである。 粘土を少しずつ動かして撮影し、連続して流すことで、まるで粘土が動いているかのように見せる「クレイアニメーション」を作るスタジオ3棟の周囲に、バナナやイチゴを栽培する畑が広がっている。持続可能な農業をもとに持続可能な文化、すなわち、人と自然が共に豊かになるような関係を築いていくための地域や社会、地球をデザインする「パーマネントカルチャー」やエコビレッジなど、日本でも注目を集めつつあるアートの最先端の思想をカタチにしたようだ。

アニメーション監督でもあるスーリヤ氏(筆者提供)

 スーリヤ氏は、ビエンチャン市内にあるラオス芸術大学(NIFA)のアニメーション学科で教鞭をとりながら、ラオス国営放送で放送中の子ども向けアニメーション番組『My Village』の制作を手掛けている。ラオスに派遣された青年海外協力隊をはじめ、ラオ語を学びたい日本人もお世話になっている人気番組だ。

 その一方で、同氏はアニメーションを通じた芸術家活動にも取り組んでおり、ヨーロッパ諸国や国際連合児童基金(UNICEF)から助成金を獲得してプロジェクトを受注したり、米国・ハリウッドや、オーストラリア・ブリスベンのQueensland Art Gallery/Gallery of Modern Artで開かれたアニメーションワークショップやイベントに招待されたりするなど、今、ラオスで最も活躍しているアーティストでもある。

スタジオ内部には粘土でつくられたキャラクタが並ぶ(筆者提供)

 農村の出身で、自分で絵を描いては川沿いで売っていたという苦労人の彼は、キャリアを自力で切り開き、今に至る。英語を独学で学び、コミュニケーションという武器を手に入れると、ラオスに滞在していたドイツ人のドキュメンタリー作家の下で通訳兼アシスタントをしながら、映像の基礎を一から学んだ。彼が本国に帰る際、機材一式を譲り受けたというエピソードから、スーリヤ氏がこのドイツ人にかなり気に入られたことが伺える。

 その後、自ら申請書を書いて日本の短期文化研修プログラムに参加した時に出会ったのが、クレイアニメだった。以来、ラオスに戻ってからも独自にノウハウを研究し、アニメの制作を続けてきた。使用するのは、アニメ専用の日本製粘土と決めているが、日本よりタイのバンコクで購入した方がなぜか値段が安いという。日本人でも知らない情報だ。

先進国と途上国の垣根がないオンラインの世界
 カンボジアのジェシーも、ラオスのスーリヤ氏も、英語や日本語など、新たな言語を習得してコミュニケーションスキルを高めることによって、デザインやアニメーションなどの特殊スキルを身につけることができた。
 それが可能だったのは、インターネットだ。いまや、インターネットを使えば、誰でも、どこにいても、いろいろな人とオンラインでつながることができ、さまざまな情報が手に入る時代になった。そう考えると、われわれは、先進国に住んでいると言うだけで、途上国の人々よりも貴重な機会や正しい情報を得ているわけではないのかもしれない。

 今後、途上国と呼ばれていた国々から世界にネットワークを広げた魅力的なクリエイターやアーティストがますます現れてくるのかもしれない。

 

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