バングラデシュ暫定政権樹立から100日 その国内評価は
前途多難な改革への道 問われるユヌス氏の手腕
- 2024/12/29
バングラデシュでは、2024年8月に学生を中心とした激しい反政府デモによりシェイク・ハシナ首相が辞任し、ノーベル平和賞受賞者のムハンマド・ユヌス氏が暫定政権の最高顧問に就いた。あれから3カ月あまり。バングラデシュの英字紙デイリースターは、記事や社説で「100日」を迎えた暫定政権をさまざまな角度から評価した。
今回の政変は、公務員の特別採用枠をめぐって7月に大規模な学生デモが発生したことがきっかけだった。特別採用枠を縮小することで沈静化すると見られていたが、8月になって学生デモと当局が再び衝突。政権と対立する野党勢力なども加わってデモはさらに拡大し、ハシナ政権を倒す事態になった。背景には、長引く不況や不公平感、政治の腐敗などへの不満があったと見られている。暫定政権には、ユヌス氏に加え、ハシナ政権を退陣に追い込んだ抗議運動の学生指導者、NGO、学術関係者らが参加している。
NGOは改革の「持続性」の課題を指摘
デイリースター紙は2024年11月19日付で、国際NGOトランスペアランシー・インターナショナル・バングラデシュ(TIB)による暫定政権に対する評価を紹介した。それによると、TIBは暫定政権について、「数々の課題にもかかわらず、新しいバングラデシュのビジョンに沿った多くの重要な措置を講じている」と一定の評価をした一方で、「期待されていたインフレの抑制は実現せず、法と秩序の問題は依然として残っている」と指摘した。また、選挙管理、汚職対策、人権、情報などの主要委員会についても、「持続的な改革という面では、いまだ多くの課題がある」とした。
地元紙はユヌス氏の「率直な」演説を評価
2024年11月17日には、ユヌス氏の34分間にわたる演説がテレビで放送された。デイリースターは翌18日の社説でこの演説の内容をとりあげた。
社説はユヌス氏の演説について、「大規模な蜂起につながった希望が、いま、根深い社会政治的分裂によってかき消されようとしている。このタイミングでユヌス氏が演説し、明確な目的を有し、今後について楽観していると伝えたことは非常に有意義だった」と述べた。暫定政権が国民の期待に必ずしも応えきれていない現状はあるものの、トップが直接、率直な言葉で現状説明を行ったことで、国民の理解に一定程度は得られたとの見方だ。
社説によると、ユヌス氏は「数日以内に」選挙管理委員会を発足させ、選挙改革に関する決定を行うと表明した。さらに、それに続いて選挙へのロードマップを発表すると約束したという。しかし、同氏が「ほかの重要な改革を実施するために選挙が数か月遅れる可能性がある」と述べたことについては、「早期に明確な方針を示すことが望ましい」として、遅滞ない選挙の実施を求めた。
社説はまた、ユヌス氏がインフレを含む経済混乱に直面しているという認識を隠そうとせず率直に発言したことを評価する。そのうえで、「ユヌス氏は、経済が回復しつつあると述べたが、特に物価が高止まりしている現状については、多くの課題が残されている」として、大いに改善の余地があることを指摘した。
その一方で、法の執行状況については、「この分野の進展は予想よりもはるかに遅い」と、明確に批判。デモによる被害者への補償についても、負傷したデモ参加者による抗議行動が起きていることを挙げ、迅速化と合理化が求められている、と主張した。
(原文)
バングラデシュ:
https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/lot-remains-be-done-the-government-3755871