難民生活の「悲鳴」 バングラデシュに逃れるロヒンギャ
コックスバザールのキャンプに新たに8万人以上が流入

  • 2025/2/25

 ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャの人々は、国内の武力衝突や抑圧から逃れて多くが国境を越えている。すでに120万人以上がバングラデシュ、パキスタン、インドなどに無国籍のまま離散している。なかでもすでに多くの避難民がいる隣国バングラデシュには、2024年8月以降、さらに8万人増えていることが分かった。

(2018年2月14日撮影)(c) Zlatica Hoke (VOA) / wikimediacommons

キャンプ内でジェンダーに基づく暴力の増加が深刻化

 バングラデシュの英字紙デイリースターによると、ミャンマーで新たな暴力が激化した2024年8月以降、バングラデシュのコックスバザール難民キャンプなどに新たに約8万人のロヒンギャが逃げてきていることが分かった。これは、ボン国際紛争研究センター(BICC)などの調査により明らかになったもので、難民キャンプにおける生活環境の悪化、ジェンダーに基づく暴力の増加、安全上の懸念などが指摘されている。

 同紙によると、この調査が特に深刻な問題として挙げているのがジェンダーに基づく暴力の増加であり、キャンプでは、身体的暴行、性的虐待、強制結婚、精神的外傷が日常化しているという。

 同紙は、2025年1月28日付の社説「ロヒンギャの新たな流入は難民危機を悪化させる」で、彼らの状況の悲惨さを訴えた。

 社説は、ロヒンギャ難民が増えるなか、「2024年の資金需要総額は8億5240万ドルだったが、ドナーからの拠出額は5億4890万ドルにとどまっている」としたうえで、近年、援助国からの支援が減っていることは「国際社会がこの危機に対する関心を失いつつあることを如実に物語っている」と述べた。また、米トランプ大統領によるアメリカの政策転換によって資金調達の懸念が再燃していることにも言及。「アメリカは2017年以降、20億ドル近い人道支援を行ってきたが、今後は不透明だ」と述べ、「国際社会が協力してこの問題に立ち向かわなくてはならない」と訴えている。

 そのうえで社説は、「こうした資金面の不確実性によってキャンプの状況が悪化する可能性は高い」と指摘。「難民が受け取る手当はわずかであり、多くの人が非正規労働や犯罪行為に走らざるを得なくなっている」と続けている。また、少数民族武装集団が若い男性を強制的に徴兵するなど、軍事化が進んでいるとの報告もあると紹介している。

 社説は、「ロヒンギャの問題は、バングラデシュが一国で背負うべきものではない。ミャンマーに安全に帰還することこそが、唯一、持続可能な解決策である。私たちは世界の指導者たちにこの危機的な状況の解決に向けた取り組みを強化するとともに、取り組みが続いている間は資金援助を増額することを強く求める」としている。

 ロヒンギャの人々はもちろん、受け入れるバングラデシュからの悲鳴にも似た訴えだ。

 

(原文)

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/rohingya-influx/news/fresh-influx-worsens-rohingya-crisis-3809086

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/fresh-rohingya-influx-will-deteriorate-the-refugee-crisis-3810311

 

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