第二次トランプ米政権を東南アジア諸国はどう見るか
「型破りなリーダー」に対して分かれる評価
- 2025/2/21
2025年1月20日にアメリカで発足した第二次ドナルド・トランプ大統領政権は、東南アジア諸国にどのような影響をもたらすのか。それぞれの視点から論じた社説を紹介する。
「ビジネスマンとしての側面」への期待感を示すインドネシア紙
インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポスト紙は、2025年1月21日付の社説「トランプ大統領の世界」で、トランプ大統領に慎重な姿勢を見せると同時に、期待感も示した。
社説は冒頭で、「アメリカの大統領が、『狂気』が自分の最大の強みだと主張することは良い兆候ではない」と述べる。これは、トランプ氏が米紙ウォールストリートジャーナルに答えて「中国の指導者は、私がクレイジーであることを知っているからこそ私を尊敬するのだ」と発言したことを指している。
「良くない」としながらも、社説は「それはおそらく私たちが今住んでいる、めまぐるしく世界が変化しつつある歴史的に特別な瞬間には、ある意味、型破りなリーダーが必要だということを意味している」と述べる。「トランプ氏は、今、まさに世界が必要としているタイプのリーダーなのかもしれない」というのだ。「世界に必要なのは、ハッタリや威勢だろう」という指摘は、本音と諦念が入り混じった思いのようにも見える。
社説がトランプ氏を「完全否定」はしない理由の一つに、彼が「取引とビジネスを重視する大統領」であることがあると考えられる。実際、社説は、トランプ氏が中国高官とも近しいイーロン・マスク氏を重用することでテスラや米国企業が中国の経済成長に寄与し、米中関係に貢献することを歓迎する姿勢を見せ、「ビジネスが政治よりも優先されるようになるという希望は確かにある」と述べている。
そのうえで社説は、プラボウォ大統領がトランプ氏との間で個人的に良好な関係を築き、トランプ氏の取引志向をインドネシアのために利用できるようになることに期待を寄せた。トランプ大統領との「個人的にも良好な友好関係」については、安倍晋三氏の例を引き合いに出しつつ、「築くことが十分に可能だ」との見方を示す。
「世界、特にインドネシアとしては、トランプ大統領の心の奥底に、アメリカ第一、世界第二の利益となる取引を喜んで行う“ビジネスマン”としての横顔があることを期待している」
中国との対立を抱えるフィリピンは米国の後ろ盾を確信
一方、東南アジアの中でも、アメリカと長く同盟関係にあるフィリピンは、第二次トランプ政権の発足をどう見ているか。フィリピンの英字紙デイリーインクワイアラーは、2025年1月21日付の社説で、主に安全保障面について論じている。
社説は、「トランプ大統領が中国の習近平国家主席と電話会談して有頂天になっていた」と指摘する。米中関係が、これまでの対立から、ある意味で融和へと方向転換する予兆はこれ以外にもあり、南シナ海領有権問題で中国とこれまでないほどに深刻な対立状態にあるフィリピンにとって、気が気ではない様子が伝わってくる。
その一方で社説は、米国務長官に指名されたマルコ・ルビオ氏が、中国に対して「西フィリピン海において好戦的な行動をとり続けていると、フィリピンや台湾との約束を守らなければならない米国としては反撃せざるを得ない」と発言したことを高く評価し、「マニラとワシントンの鉄壁同盟がトランプ政権下でも維持されるという前向きな兆候もある」との見方を示す。
このように、現在の外交上、最大の懸念と言える中国との対立について「米国の後ろ盾」を確信したフィリピンは、トランプ大統領が「アメリカ・ファースト」に基づき他国への援助を凍結する方針を打ち出したことについて比較的冷静に受け止めているようだ。社説は1月30日付で、「フィリピンには頼れる経済パートナーがほかにもたくさんいる」と指摘し、その中の一つに日本を挙げて次のように期待を示した。
「アメリカからの援助が後退する可能性はあるが、その影響は、長期的に見れば、他の信頼できる同盟国、特にフィリピンへの政府開発援助の最大の拠出国である日本との関係を深めることによって相殺できるはずだ」
(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2025/01/21/its-trumps-world.html
https://www.thejakartapost.com/opinion/2025/01/18/prabowos-us-envoy.html
フィリピン:
https://opinion.inquirer.net/180171/buckle-up-trump-is-back
https://opinion.inquirer.net/180430/coping-with-the-us-aid-freeze