中国の「気候外交」と一帯一路
低炭素経済を掌握してエネルギー覇権を狙う野望

  • 2021/5/27

クリーンエネルギーとしての原発輸出

 気候変動問題は、かつての産業革命に匹敵するほどのエネルギーと産業構造の変革をもたらし得る。そして、このポスト化石燃料エネルギー世界に向けた産業競争において「トップを取りたい」という野心を抱いているのが、中国だ。たとえば自動車産業のように、従来の化石エネルギーに依存した高排出産業技術において、中国が欧米諸国や日本の技術を追い抜くことは難しいが、再生可能エネルギー依存型の技術であれば、まだそれほど格差はない上、途上国という建前でカーボンピークまで10年の猶予を得た中国はむしろ有利だという目論見だ。
 さらに中国は、「エネルギーを制するものは世界を制する」と考えている。一帯一路の国々に中国製のエネルギープラントと産業チェーンを移転させていくことは、すなわち沿線国のエネルギー政策にコミットできることを意味しており、国家の命綱を握ることに等しい。きたる世界の大変局後、国際秩序の再構築の際に中国が主導権を握る「中華民族の偉大なる復興」を目指す中国にとって、これは重要なステップだ。

2018年12月に稼働を開始した中国・台山原子力発電所 1号機 (c)新華社/アフロ

 ところで、読者の皆さんは、「クリーンエネルギー」の中に、太陽光や風力だけでなく、「核エネルギー」、つまり原発も含まれていることにお気づきだろうか。筆者はかねてより、中国のエネルギー覇権の支柱になるのは原発技術だと考えている。中国は、原発を一帯一路の沿線国に輸出してエネルギー分野の覇権をとる道を想定し、国内産業にとっても厳しい二つのカーボン目標を自らぶち上げたのではないか。
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 さて、日本も温暖化ガス削減を2013年度比46%という厳しい目標を掲げた。だが、その気候外交の背後に、中国のような野心や戦略はあるだろうか。外交とは、交渉を通じて自国に有利なルールを誘導することだ。気候変動や温暖化ガスの削減を語る時には、中国にエネルギー覇権を取らせないためのシナリオを準備することが必要だ。

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