「高市氏の城」 新政権に寄せるインド紙のまなざし
「有権者の右傾化」の背景に相反する見方を示す地元の2紙を読む

  • 2026/3/12

 2月8日に投開票が行われた日本の総選挙では自民党が圧勝し、第二次高市政権が発足した。日本初の女性首相に対し、グローバルサウスのリーダー国の一つ、インドはどんな視線を向けているのか。インドの2紙の社説を紹介する。

第二次高市内閣(2026年2月19日撮影)© 内閣広報室 / Cabinet Public Affairs Office

タイムズオブインディア紙はクアッドの枠組み強化に期待

 インドの英字メディア、タイムズオブインディアは、2月8日付の社説で「日本初の女性首相が圧勝へ インドとクアッドにとって朗報」と論じた。クアッド(QUAD)とは、アメリカ、インド、日本、オーストラリアの4カ国による地域秩序の枠組みを指す。

 「ドラムを演奏し、1日2時間しか眠らず仕事をこなし、日本の若者から大人気の日本初の女性首相、高市早苗氏が今回の総選挙で圧勝する見通しだ」。投開票日の選挙速報を追いながら書かれたと見られるこの社説は、インドとしては高市氏の勝利を歓迎するという論調だ。

 社説は、高市氏への高い支持率について「高市氏の国家安全保障や移民政策における強硬姿勢、政府の支出拡大の公約が支持を集め、極右・極左からの票を奪っているようだ。彼女の保守的な立場は、日本の深く家父長的な社会政治構造における政治的な摩擦をも軽減しているようだ」と分析。その背景には有権者の右傾化がある」とし、高市首相がアメリカのトランプ大統領との関係も良好であることを指摘した。

 では、高市政権は、インドにとってどんな存在なのか。社説は、「高市氏の中国への強硬姿勢はインドにとって有益だ」と評する。また、高市氏を安倍晋三元首相の後継者として位置付け、次のように述べる。

 「(高市氏は)クアッドを重視し、自由で開かれたインド太平洋の枠組み内で継続的な協力をインドに保証する。トランプ大統領は今のところクアッドに熱心とは言えないが、ワシントンの風向きは変わるかもしれない。さらに、高市氏の政治的な権限は強力であり、クアッド首脳会議の開催をモディ首相に強く働きかけることもできる」

 つまりインドは、高市首相なら中国への対抗軸という意味で重要なクアッドの枠組みにトランプ大統領をつなぎとめることができる、と見ているのだ。米中の接近はインドにとって脅威であり、対中強硬派の高市氏とは「気が合いそうだ」というのが、タイムズオブインディア紙の評価であるようだ。

ヒンドゥー紙は「保守主義を超えて包括的な政策を」と訴え

 もう一つのインド紙、ヒンドゥーは2月11日付で日本の総選挙に関する社説を掲載した。こちらの論調は、「日本は保守主義を超え、包括的な政策を採用すべきだ」というものだ。

 高市首相が選挙で圧勝したことについて、社説は「これだけの大きな支持を背景に高市政権が日本の再軍備とより強硬な外交政策を進めた場合、同氏は歴史の負の側面に関わってしまう危険性がある」と危機感を示し、こう続ける。

 「日本は第二次世界大戦後に平和主義を貫いて経済を再建し、生活水準を劇的に向上させることに成功した。日本は台湾問題を巡って最大の貿易相手国である中国との経済関係を危険にさらすような挑発的な発言をするより、従来の慎重で戦略的な曖昧な立場に戻り、地域の安定を優先すべきだ」

 さらに社説は、「高市首相が掌握する圧倒的多数の議席は、硬直した保守主義を超えて、平和主義に根差した、より現実的で包括的な政策を追求する好機となり得るだろう」との見方を示す。「有権者が右傾化している」という前出のタイムズオブインディア紙とは異なる見方だが、「右傾化」の背景にあるのは硬直した意向ではなく、少子高齢化や賃金の停滞、根強いジェンダー格差といった、社会課題の解決を期待する「現実的」なものではないか、という推測だ。

                 *

 高市氏は啖呵を切って「高市早苗が首相でよいのかどうかを決めていただく」と発言した。しかし、投票は白紙委任ではない。国民はこれから打ち出される一つ一つの政策に対して判断を重ねる。ヒンドゥー紙の社説が指摘するように、高市氏が自らへの支持を読み間違えてしまわぬよう、願うばかりだ。

 

(原文)

インド①:

https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-edit-page/takaichis-castle/

インド②:

https://www.thehindu.com/opinion/editorial/takaichis-triumph-on-japans-snap-election-results/article70615870.ece

 

 

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