「名乗れなくても伝えたい」匿名アートで表現する抑圧下のミャンマー
祖国への想いと正義の下で共同作品展につどった女性たち
- 2022/6/20
「名前を知られたくない存在」の武器
「自分のアイデンティティを表現することが禁じられたとき、どのように物事を伝えることができるだろうか」
会場の入り口に、こう問いかける文章が掲示されていた。ほとばしる思いや主張を人に伝えるための表現であるにも関わらず、作者だと名乗れないアーティストたちの無念さはいかばかりだろう。ひとえに生き延びるため、そして家族や大切な人を魔手から守るために、「名前を知られたくない存在」として匿名を貫く。
それでも、「私たちの武器はアート」という言葉通り、写真、オブジェ、映像、そしてパフォーマンスを通じて表現し、伝え続ける彼女たち。正義と想いをもった匿名性の強さが、そこにはある。
「明日は勝つ」「2週間後には」「1カ月後こそ」と自らに言い聞かせ、闘い続ける日々も、500日を超えた。「それでもわれわれはまだ希望を捨てていない」と、キュレーターの女性は二度、繰り返した。家族も財産もキャリアも捨てて祖国を出なければならなかった人々も、今なおミャンマーにとどまり軍に抵抗し続ける人々も、新たな人生とキャリアを手にして国の再建に力を尽くせる日が来るまで、アートを通じた革命を続ける覚悟だ。