ミャンマーに浸透する中国の宣伝工作
地元メディア隠れ蓑に「香港デモは米国のせい」

  • 2019/11/18

世界中で行われる情報戦

 今回の稀有な報道で中国のミャンマーでの宣伝工作が明らかになった訳だが、公平を期すために指摘すると、こうしたマスコミを通した情報戦は、中国だけが行なっているわけではない。ミャンマー語で放送しているラジオ・フリー・アジア(RFA)やボイス・オブ・アメリカ(VOA)は米国の国営メディアだし、ミャンマーの亡命メディアだったテレビ局「ビルマ民主の声(DVB)」や週刊誌「ミッジーマ」も海外から支援を受けていた。

ミャンマーで発行されている中国に関する情報誌(筆者撮影)*写真は本文と関係ありません

 また、国際社会への発信力が弱いとされる日本も、ミャンマーでは活発に活動をしている。官民ファンドのクールジャパン機構や、NHKグループで海外での情報発信を担当する「日本国際放送」などが出資する合弁企業ドリームビジョンは、ミャンマーの地上波テレビ局「MNTV」を実質的に運営している。MNTVは、ミャンマー語が流暢な丸山市郎駐ミャンマー日本大使のインタビューを長時間放送し、「日本の大使がこんなにミャンマー語がうまいなんて」と視聴者を驚かせたこともある。

 中国が宣伝工作を行うのは、ミャンマー国内に限ったことではない。しかし、今回の調査報道で浮かび上がった問題は、ミャンマー人に隠された形で一部のメディアが中国の影響下にあるという現状だ。

 ミャンマーでは、自由なマスコミは2011年の民政移管を機に生まれたばかりで、新聞社やテレビ局はまだ財政基盤が弱く、記事と広告を線引きするルールも不明確だ。また、長い間自由なメディアに触れていなかった一般市民は、メディアリテラシーを身につける機会がなかった。こうした状況にあるミャンマーでは、宣伝工作が容易に浸透する土壌があることは間違いないだろう。

 

参考記事:ミャンマーナウ 

https://www.myanmar-now.org/en/news/how-china-pushes-its-agenda-in-myanmar-media

 

ページ:
1 2

3

関連記事

 

ランキング

  1.  世界で最も権威のある報道写真コンテストの一つ、「世界報道写真(World Press Phot…
  2.  アメリカのトランプ大統領とロシアのプーチン大統領があいついで中国・北京を訪問し、習近平国家主席…
  3.  アメリカとイランの戦争は、不安定な停戦に入ってなお予断を許さない状況にあります。アメリカ在住の…
  4.  2024年7月から8月にかけて若者らの抗議活動が激化し、当時のシェイク・ハシナ首相率いるアワミ…
  5.  1990年代初頭、内戦の傷跡が色濃く残るカンボジアに足を踏み入れた一人の日本人がいました。学校づく…

ピックアップ記事

  1.  30年前、内戦直後のカンボジアで、戦火をくぐり抜けて残った数本の在来種の胡椒の木を大切に育てる老農…
  2.  少数派イスラム教徒ロヒンギャの人々の証言を基に紡がれた映画『LOST LAND/ロストランド』…
  3.  ドットワールドと8bitNewsのコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロスメデ…
  4.  世界の映画祭を巡りながら、観る者の心を静かに、そして確実に揺さぶっている映画が4月24日より一般公…
  5.  タイで昨年、これまで認められていなかったミャンマー人難民の就労を認める制度が始まりました。北西…
ページ上部へ戻る