終わらないタイとカンボジア国境紛争 隔たり広がる両者の主張
国内に深刻な問題を抱えつつエスカレートする避難の応酬
- 2026/1/11
タイとカンボジアの国境紛争が再燃している。2025年12月24日、両国は軍関係者による停戦協議を始め、12月27日に停戦合意にいたったものの、7月に停戦合意した時にはその後も戦闘が続いており、履行されるかは不透明だ。両国のメディアを見ても、互いを非難する姿勢はエスカレートしており、事態は悪化している。タイ側で20人以上、カンボジア側で200人以上が死亡しているという情報もあり、両国を併せて70万人以上が避難しているという。

タイ軍の攻撃を受けてカンボジア軍が放棄した基地に残されていた中国製兵器「GAM-102」シリーズ(2025年12月14日撮影)(c) LeongLT /wikimediacommons
「カンボジアは失策を隠し被害者を装っている」と批判するタイ
タイの英字紙バンコクポストは2025年12月10日付で「平和から遠く離れて」と題した社説を掲載した。
社説はカンボジアについて、「地雷処理の失敗や、国際的な詐欺ネットワークの温床になっているというイメージの悪さから注意をそらすために、武装衝突を煙幕として利用している」と指摘。「国際社会からの同情を得るために被害者を装うという常套手段に訴えている」と批判した。
その一方で、カンボジアに強硬姿勢をとるタイのアヌティン政権に対しては、「威勢の良い指導スタイルは国民の誇りを高める」と、一定の評価を下す。アヌティン首相は、2025年1月31日までに議会を解散して総選挙を実施すると言われており、国境紛争に関する強硬姿勢は今後も続く、と同紙は見ている。ただし、そのアヌティン首相も、カンボジアを拠点とした詐欺ネットワークの中心人物と一緒に映った写真が流出するなど、足元は怪しい。これについて、社説は「アヌティン首相は無数のタイ人をだましてきたグレービジネスを根絶する誠意と決意を示す必要がある」と求めている。
カンボジアは自らの道義的な優位性を強調
これに対し、カンボジアの英字紙クメールタイムズは2025年12月19日付の社説で、「タイがカンボジアに対する攻撃をエスカレートさせる真の目的は何か」について、カンボジア側の視点で考察した。
社説は、「客観的に見ると、タイの行動は正当な安全保障上の懸念や自衛というより、国内の政治的な思惑とタイ国内の根強い権力構造に駆られた一方的な武力行使にほかならない」と、タイを批判する。また、アヌティン首相の政権について、「オンライン詐欺ネットワークとの疑惑関係や正統性の低下、国家災害への対応の不十分さなどの面から、国民の監視の目が強まりつつある」としたうえで、「カンボジアへの攻撃は、国民の怒りを外部に向けて国内の圧力をそらすための陽動作戦だ」との見方を示した。
さらに同紙は踏み込んで、カンボジアのフン・マネット政権の転覆を狙っているのではないか、とタイ側の「野望」にも想像を巡らせる。
そのうえで社説は、カンボジア側が「道義的な優位性」を握っている、と強調する。
「今後の展開は、カンボジアとタイがどんな行動に出るかというだけでなく、国際社会、特にASEANの対応にも大きく左右されるだろう。主要な国際パートナーによる明確かつ共同の圧力がなければ、タイの武力行使は今後も続いて人道的苦痛が深刻化するうえ、地域の平和を支える規範も侵食される可能性が高い」と、社説は警鐘を鳴らす。
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国際社会からの圧力を求めるカンボジアと、対外的な影響より国内向けに強硬姿勢を貫くタイ。皮肉なことに、双方とも国内に深刻な問題を抱えている。また、互いに国民の生命を奪い、脅かしていることも共通している。
(原文)
タイ:
https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/3153623/edging-far-from-peace
https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/3150944/no-landmine-compromises
カンボジア:












