タイの国境地帯でコロナ感染者が急増
違法帰国者の取り締まりの難しさが浮き彫りに

  • 2020/12/24

 タイのミャンマー国境にあるチェンライ県で越境労働者の新型コロナ感染が急増し、問題になっている。国外からの新型コロナ流入を厳しく抑制していたタイで、なぜこのようなことが起きているのか。12月8日付のタイの英字紙バンコク・ポストはこの問題を社説で採り上げた。

タイでは国境地域を中心に再び新型コロナの感染が拡大しつつある(c) Kseniia Ilinykh / Unsplash

ミャンマーからの帰国者の感染が明らかに

 社説や現地からの報道によれば、ミャンマーと国境を接するチェンライ県で、11月下旬以降、新型コロナの陽性者が相次いで確認されている。11月24日に最初の感染が見つかって以来、その数は26人に上っている。社説によれば、そのうち6人はミャンマーからタイへ違法に帰国したタイ人だという。また、タイ全体で見ると、ミャンマーから戻った人たちに直接的、もしくは間接的に関わった感染者は38人に上るという。

 チェンライ県と国境を接するミャンマーのシャン州には、タチレクという町がある。ここには、タイ人など外国人を対象としたカジノ併設のホテルがある。現地からの報道によると、チェンライ県で感染が確認された帰国者の多くはこのホテルで働いており、非正規のルートで帰国したという。タイ政府は、タイに入国するすべての人に14日間の強制隔離を実施しているが、タチレクからの違法帰国者はこの強制隔離に従っておらず、感染に気付かないままタイ国内を移動していたという。

 タイ国内でこれまでに確認されている新型コロナ感染者は4000人余り。死者は60人だ。4月下旬には1日あたり約50人の新規感染者が出ていたが、5月以降はタイ全土で見ても1日の新規感染者が20人以下という日々が続き、感染拡大が抑制されてきた。タイ政府による厳しい強制隔離が奏功したものとみられているが、今回のチェンライ県の感染者増加によって、国内では再び緊張感が高まっているという。

コントロールに苦慮する陸の国境

 「今回の一件で、ミャンマーのタチレクが感染のホットスポットになっていることは明らかだ。地方当局によると、タチレクで働いている多くのタイ人が、今後、感染を恐れてタイに戻ってくるだろうと見ている。すでに帰国している人の中にはミャンマーから戻ったことを隠している人たちもおり、余計に感染拡大の抑制を難しくしている」と、社説は指摘する。

 社説によれば、メーサイでは感染者を治療するための病院側の受け入れ準備が進んでいる上、国軍もドローンなどを活用し、国境周辺で違法入国者がいないかどうかを監視しているという。

 それでも社説は「こうした対策は十分ではない。タイに帰国する者には、必ず公式なチェックポイントを通過し、違反者は罰せられるということを改めて周知し、徹底しなければならない」と指摘。「メーサイのビジネス関係者も違法入国者によって影響を受けるのだから、防疫措置に従わない帰国者を通報することも視野に入れて検討すべきだ。同時に、政府は、違法入国を黙認する担当官たちを許してはならない」と述べ、政府や民間がそれぞれにしっかり対応する必要があると説く。

 ミャンマーのタチレクとタイのメーソンは、そもそも人の往来が多いにぎやかな国境で、カジノだけでなく、さまざまなビジネスが展開されている。しかし、両国をこの地点で隔てるのは、小さな川ひとつだ。経済的にも社会的にもつながりの深い「陸の国境」のコントロールの難しさを物語っている。

 

(原文: https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2031631/nip-covid-fiasco-in-bud)

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