ウクライナ戦争がアジアに与える不安と矛盾
激化する対立の背後で進む再軍備と原油の争奪戦

  • 2023/2/23

 ロシアによるウクライナ侵攻から1年。アメリカなど北大西洋条約機構(NATO)の同盟国やパートナーは、ウクライナに対して戦車の供与を決めるなど、戦争は収束への道筋が全く見えないままだ。

アメリカがウクライナに供与を決めた戦車エイブラムス (c) US Army / Wikimedia Commonsより

ヨーロッパからアジアへ波及する懸念

 シンガポールの英字紙ストレーツタイムズは、2023年1月31日付紙面で「ヨーロッパの戦争が危険な局面に」と題した社説を掲載した。

 社説は、「ロシアによるウクライナ侵攻から1年を迎える今、敵意は和らぐどころか、戦闘の激化は避けられない様相だ。米国が31両以上の主力戦車エイブラムスの供与を決めたことも、この紛争に新たな危機をもたらした」として、武力対立がさらに激化するとの見通しを示した。

 また、社説は、ドイツ、フランス、スペイン、ポーランド、フィンランドなども、すでにウクライナに対して武器を供与していることに触れ、ロシア側はこうした供与を戦争への「直接関与とみなしている」と、指摘。ウクライナ側もロシア側と和平交渉をする可能性を完全に否定しており、対立は深刻化する一方だという。

 社説は、そこからアジアに目を転じ、「アジア諸国は情勢を深い懸念を持って見つめている」と、述べる。なぜなら、このヨーロッパの戦争の影響は、アジアにも大きく波及しているからだ。その影響として社説がまず挙げたのは、日本の「再軍備」だ。「日本が防衛政策を大きく転換して、敵基地攻撃能力を保有することは、ドイツがウクライナに戦車を供与することと、もはや無関係ではない」と、指摘。また、米国が「ロシア側に加担したとして、中国企業に制裁を加えたという報道」にも触れ、「すでにアジアはこの戦争と無関係ではいられない」と、訴えた。

ロシア産原油がお買い得?

 その一方で、欧米諸国とロシアとの対立によって、ある種の「恩恵」を受けている国もある。

 主要7カ国(G7)は2022年9月、ロシア産原油の輸入価格に、1バレル60ドルの上限を設けることで合意した。ロシアの貿易収入を減らすことが目的だ。一方のロシアは、こうした制裁に対抗し、同国産の原油の購入に前向きな国に積極的に価格を下げた。その恩恵を受けたのが、インドだ。昨年11月のフィナンシャルタイムズによると、インド向けの石油輸出量は、イラクとサウジアラビアを抑えてロシアが最も多かったという。

 こうした状況を受け、パキスタンの英字紙ドーンは2023年1月22日付で「パキスタンもロシア産原油とガスの輸入を増やせ」という社説を掲載した。

 社説によれば、パキスタンとロシアは1月半ば、原油の取引をめぐる二国間協力について、「一歩前進した」という。貿易における使用通貨など未解決の課題はあるものの、合意までの「最終段階にきている」という。「合意が成立すれば、パキスタンは原油輸入にかかるコストを年間5億ドルから10億ドルを節約でき、貿易赤字の解消につながる」と、社説は期待を滲ませる。

                 *

 武力対立を深めるロシアとウクライナ。そこに西側諸国の武器が供与され、事態は明らかに深刻化している。しかし、その背後では、欧米諸国の経済制裁を受けて価格の下がったロシア産の原油をめぐり、インドやパキスタンが争奪戦を繰り広げている。同時期に掲載された2つの社説から、戦争がもたらす深い矛盾が浮き彫りになった。

 

(原文)

シンガポール:https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/a-dangerous-phase-in-europe-s-war

パキスタン:https://www.dawn.com/news/1732995/oil-from-russia

 

 

 

 

 

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