米国は中国の太平洋諸島進出をどう見ているか
島嶼国の監視を怠ってきた失敗を踏まえた起死回生策の行方
- 2022/7/4
アフリカに広がる一帯一路の悪評
このような反中感情は、島嶼国地域に限定されない。アフリカ南部ザンビアでは2020年5月、地元の人々から「わが物顔で振る舞っている」と反感を買った中国繊維企業の工場が焼き討ちにあい、従業員に惨殺された幹部3人の遺体が見つかった。
この事件に先立ち、首都ルサカでは住民が中国人による不当な扱いについて不満の声を上げ、中国人が経営するビジネスの閉鎖を求める運動を展開していた。にも関わらず、ザンビア政府は同年6月に開かれた国連人権理事会で、香港国家安全維持法に反対する日本などとは対照的に、中国への支持を表明した。「反中感情を強める住民」対「中国と結託する現地政府の腐敗官僚」という構図と、両者の意識の乖離は、ソロモン諸島とまったく同じだ。
反中・反新植民地主義運動は、ザンビアにとどまらず、ナイジェリア、レソト、アンゴラ、南スーダン、マラウィなど、多くのアフリカの国々に広がっている。中国の「援助」が、対象国の住民からこれほどまでに尊敬の念を勝ち得ていないことには留意する必要があろう。
平和的で相互に利益をもたらすことを謳う中国の一帯一路は、「参加国の資源が狙い」「土地買収で地元を浸食」「現地人を人間扱いしない」「投資と大量移民による乗っ取り」「縁故主義で腐敗している」「暴利をむさぼる外交」など、評判は散々だ。
このような世界的な文脈を踏まえれば、2019年に開かれたPIFに出席したキリバスのアノテ・トン大統領(当時)やフィジーのフランク・バイニマラマ首相が、「オーストラリアのスコット・モリソン首相(当時)の傲慢さと比べれば、中国はまだマシだ」と発言した真意は、決して中国に心服したためではなく、島嶼国を見下す白人国家に対等な扱いを求める上で、「梃子」として中国を引き合いに出したと見るのが適当だろう。
米国は、島嶼国の国民感情を心に刻んだ上で、予算と人的資源の割当ての裏付けを伴う関与の強化を迅速に実行する必要がある。