COP29 気候変動に苦しむ途上国から先進国に厳しい批判
要求額の2割にとどまった気候変動対策の拠出金 交錯する落胆と安堵

  • 2024/1/3

 アゼルバイジャンの首都バクーで開かれた「第29回国連気候変動枠組み条約締約国会議」(COP29)が、2024年11月24日に閉幕した。会議では、途上国の気候変動対策を支援する資金をめぐり、会期を延長して議論が続けられた。最終的に成果文書は採択されたものの、途上国には大きな不満が残り、先進国を非難する声が相次いだ。

(c) The Presidential Press and Information Office of Azerbaijan / Wikimedia Commons

合意をあきらめて到達した「最終合意」

 インドの英字紙ヒンドゥーは、2024年11月26日付の社説でこの問題をとりあげた。

 社説は、COP29の結末について「各国はついに意見の相違を埋めることをあきらめた。最終合意は、ほぼすべての途上国を落胆させ、先進国を安堵させ、そして地球を依然として危険な道へと導くロードマップとなった」と表現した。

 COP29の成果文書では、「2035年までに少なくとも年間約3,000億ドル(46兆円あまり)を途上国に対して支援する」とされた。この金額は、現在の年間1,000億ドルから3倍に引き上げられたものの、より多くの拠出を求めていた途上国側にとっては依然として「微々たる額」であるうえ、補助金だけでなく融資が含まれていることに対しても、憤りの声が上がっている。

 社説は、「国際交渉の世界では、各国が最大限の要求を持ち込んで議論を交わし、最終的にはそれらが縮小される形で妥協に至ることが一般的だ」としたうえで、「それにしても今回は要求と合意の間のギャップが大きすぎる。3,000億ドルは決して小さな金額ではないが、当初の要求額のわずか2割にとどまっている」と述べ、途上国側の意見に賛同する。

 また社説は、最近の気候変動対策について、「言葉遊びや政治的なポーズが、意味のある行動よりも優先されている」と厳しく批判。「世界的な連帯よりも市場競争の論理が重視され、気候変動交渉と貿易紛争がからみあっていることは明らかだ」として、さまざまな商品の国際競争力が弱まることを恐れて積極的に気候変動対策を行おうとしない先進国を批判した。さらに、トランプ氏が米国の次期大統領に再選されたことにより、「2025年は、2017年に米国がパリ協定から離脱した時と同じようなドラマが繰り返される可能性がある」と指摘。「気候危機がますます差し迫る中、世界は今こそ違いを再確認し、絵空約束ではなく、真の変革に向けて行動を起こすべき時だ」と主張した。

「富裕国は説明責任を果たせ」

 フィリピンの英字紙デイリー・インクワイアラーも2024年11月27日、「気候危機に対する“わずかな金額”」と題した社説を掲載した。

 社説は、「フィリピンは気候変動に対して脆弱な国であるため、1兆3,000億ドルの気候変動対策資金を目標としてきた」と述べ、同国の脆弱性について、実例を挙げながら次のように説明した。「海の温暖化により異常気象が激しくなっているため暴風雨が頻発し、雨量が増えて洪水が起きる。その結果、農地への被害が深刻化し、死者も出る。こうした壊滅的な影響があることをわれわれは十分に理解している」

 さらに社説は、「地球規模の気候変動対策のための資金が死活問題となる国は、フィリピンだけではない」としたうえで、「フィリピンは自国だけでなく、他の国々のためにも声を上げるべきだ」と主張。政府に対して、「途上国を黙らせようとするのではなく、これまで二酸化炭素を排出し続け、気候変動を加速させてきた富裕国に説明責任を果たすよう声を大にして要求してほしい」「貧しい国々は、今日の気候変動の原因とほとんど関係ないのに、その悪影響の矢面に立たされている」と、求めた。

先進国は人類の生存を脅かす

 バングラデシュの英字紙デイリースターは、2024年11月23日付で「先進国はバスに乗り遅れている」と題した社説を掲載した。

 社説は、COP29の内容について「先進国はパリ協定の精神を無視することを選んだ」と厳しく批判する。「気候変動対策に対して資金を拠出することは、先進国にとって、好意ではなく義務である。気候変動の影響は、貧しい国ではより深刻化している。先進国が、現実から目を背けるようなアプローチをとり続けることは筋が通らない」

 さらに、「先進国は、気候変動による壊滅的な影響を軽減するという義務を果たさずに、人類全体の生存を危機にさらしていることを自覚してほしい」と、厳しく責任を問うている。

 

(原文)

インド:

 https://www.thehindu.com/opinion/editorial/return-to-action-the-hindu-editorial-on-moving-ahead-after-baku/article68909020.ece

フィリピン:

 https://opinion.inquirer.net/178683/a-paltry-sum-for-climate-crisis

バングラデシュ:

 https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/developed-nations-are-missing-the-bus-3759756

 

 

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