大激戦の米大統領選をインドはどう見るか
トランプ氏の経済政策について「ばかげている」と一蹴するメディアも
- 2024/11/4
世界が注目するアメリカの大統領選は11月5日の一般投票日を前に、民主党のハリス副大統領と、共和党のトランプ前大統領が激しく競り合っている。この選挙戦を、グローバルサウスの中心として存在感を放つインドはどう見ているのか。インド国内の英字紙の報道ぶりを伝える。
ハリス氏なら「進歩的」、トランプ氏なら「場当たり的」
ヒンドゥー紙は10月26日付の社説で、接戦の米大統領選について「米国の有権者は、トランプ氏とハリス氏という、全く異なる選択肢を与えられている」と論じた。
社説は、「価値観や公人としての人物像がこれほど異なる候補者はいなかった」と表現。勝敗の行方を左右する激戦区での接戦ぶりを伝えた。
2人の特徴について、社説は「ハリス氏を選べば、米国は社会的にも経済的にも進歩的な政策を継続することになる」と指摘。他方、「トランプ氏を選んだ場合は、彼の性格や気まぐれな気質による保守的なアプローチ、内政・外交政策におけるその場しのぎのアプローチを選ぶことになる」と述べ、ハリス氏寄りとも取れる評価をしている。
「とても愚か」で「トランプらしい」経済政策
タイムズ・オブ・インディア紙も10月25日付の社説で、トランプ氏の政策について「とても愚かだ。そして、とてもトランプらしい」と、揶揄したタイトルで論じている。
社説は「トランプ氏がこれまでにない奇妙な経済政策案を掲げている」と述べた。指摘されているのは、トランプ氏が提唱している「個人所得税の廃止」案だ。トランプ氏は、廃止する所得税分の歳入減少を補うために輸入品に高い関税を課すことを提案しているが、社説は「関税を吊り上げて所得税の税収を相殺しようとするのは不可能だ」と断じる。
その理由として、社説は「そもそも米国では個人所得税が歳入の49%を占めているのに対し、関税収入は税収入全体の1%に過ぎない」という現状を指摘。さらに、関税を引き上げれば貿易や国内経済が混乱するだろうとの見方を示した。また、個々の所得に応じて徴収額が決まる所得税は「政府が正しく実施している政策であり、公平な税金だ」と述べ、所得税という税制そのものの価値にも言及した。
「減税には必ず代償が伴う。所得税ゼロを主張する者はいない。なぜならそれはばかげているからだ。そして、それがトランプ氏らしい理由でもある」
バイデン政権の中東へのインパクトに陰り
一方、米大統領選が中東情勢に与える影響について論じたメディアもある。インディアン・エクスプレスは10月28日付で「米大統領選と、イラン・イスラエルの静観戦略」と題した社説を掲載した。
社説は、緊張感を増すイスラエルとイランの対立について「これまで急激な事態の悪化が起きずに済んでいるのは、バイデン政権の努力を受けてイスラエルが行動を抑制しているためだ」と見ている。対するイランについても、「米国は報復を控えるよう強く求め、対立の激化を防ぐために国際的な力を集結している」と社説は指摘した。つまり、バイデン政権のおかげでイランもイスラエルも抑制を保っている、との見方だ。
「しかし、これは時限爆弾のようなものだ」と社説は言う。イスラエルは挑発されればエスカレートを辞さない構えであり、対するイランも反撃の権利があることを主張している。また社説は、「イランとしては、アメリカの圧力に屈したかのように見られるわけにはいかない、という事情がある」とも指摘。「大統領選が近づくにつれて両国ともかろうじて保っているバランスが崩れる可能性が高い」と述べ、危機感を強めている。
中東情勢が激戦州の勝敗を左右する可能性も
逆に、10月27日付のタイムズ・オブ・インディア紙は、中東情勢が大統領選に与える影響について、「中東情勢の不安定さ」と題された社説で論じた。
社説は「中東情勢がミシガン州のような激戦州での投票結果に影響を与える可能性がある」と指摘する。その理由は、ミシガン州には米国で最も多くのパレスチナ系・レバノン系のアメリカ人が居住しているからだ。彼らは2020年のバイデン勝利に貢献したが、現在は中東情勢の悪化を受けて反ハリス感情を高めつつあるという。
また、イスラエルによるイランへの攻撃が、石油・原子力施設を外した「正確な攻撃」であったことから「米国の要求通りだった」と述べ、「中東の紛争を米国がコントロールしている」現状についても指摘した。
(原文)
インド:
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/west-asia-beyond/
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/very-silly-very-trump/