東南アジアと南アジアで広がる豪雨災害
対策と備えの在り方に警鐘を鳴らす地元英字紙の社説から
- 2026/1/13
2025年12月初め、東南アジアや南アジアで豪雨による甚大な被害が広がった。熱帯低気圧と季節風によるもので、被害はインドネシアをはじめ、スリランカ、マレーシア、タイ、ベトナムにおよび、AFP通信によると同月初旬だけで1790人以上が亡くなったという。

サイクロン・セニャールの襲来で大洪水に見舞われたインドネシアの北スマトラ州パダンシディンプアンの様子(2025年11月26日撮影)(c) Indonesian National Board for Disaster Management / wikimediacommons
「統治の本能」の鈍化を指摘するインドネシア紙
インドネシアでは西部スマトラ島の各地で洪水や鉄砲水が発生し、500人以上が死亡した。インドネシアの英字紙ジャカルタポストは2025年12月10日付の社説で、この問題をとりあげた。
社説は次のように述べ、スマトラ島におけるインドネシア政府の災害対応を厳しく批判する。
「人道的な観点から国家が果たすべき義務は明確である。すなわち、安全の確保、緊急支援の提供、正確な情報伝達、そして利用可能な資源の動員だ。にもかかわらず、被災地域の多くでは支援が遅れ、インフラの損壊による孤立状態が続き、飲料水の不足や医療施設のキャパシティ超えが報告されている。こうした状況は、単に運用上の欠陥にとどまらず、緊急時における生命・健康・保護の権利の侵害である」
そのうえで社説は過去の災害時のインドネシア政府の対応と比較し、「これまでの政権は、より強力な調整力と、明確な指揮系統を示していた」と述べる。具体的には、2004年のインド洋津波や、2018年のスラウェシ地震を挙げ、どちらの災害時も政府が迅速に対応し、国際パートナーと透明性の高い協力を行ったと評価した。
「これらの対応は完璧とはほど遠かったものの、『まず行動し、議論はそのあと』という統治の本能を反映していた」と社説は振り返り、今回の水害対策ではその本能が鈍っていると指摘する。
スリランカ紙は制御ではなく軽減対策を訴え
一方、スリランカでも、今回の水害は2004年の津波以降、最悪の気象災害だとされている。同国の英字紙デイリーニュースは、2025年12月7日付の社説でこの問題を取り上げた。
社説によると、今回の被害は道路や橋、鉄道などに深刻な打撃を与えたほか、農作物の損害による野菜価格の急騰、学校の被災による教育の中断など、広範囲にわたっている。
「洪水とサイクロンにより約500人が亡くなり、180万人が被災した。これは確かに甚大な損失である。財産被害も膨大だ。低迷する国家経済がこの損失にどう耐えられるのか、誰にも予測できない。政府は費用の大半を国民に負担させるほかないだろう。これは、すでに重い負担を強いられている国民をさらなる苦境へと追い込むことになる」
その一方で、社説は、「災害への備え」が将来、起こり得る災害への対策として重要だと指摘し、「自然の猛威は、我々の先進技術をもってしても、制御できない場合がある。しかしその影響を軽減するための対策はさまざまに講じることができる」と述べる。例えば、今回の被災地の場合、地すべりの危険性があると言われていた場所に多くの人が住んでいた、という指摘がある。「防災」、「減災」という考え方に立ち、土地や建造物に対する情報共有や知識の普及が行われていれば、生命や財産の損失を防ぐことができたのかもしれない。
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インドネシアもスリランカも、過去に何度も大きな自然災害を経験している。世界に視野を広げれば、日本を含め、多くの防災・減災の知恵と工夫が蓄積されている。政府間の巨額の援助資金だけが解決策ではない。草の根レベルでも、共有できる経験と知恵はあるはずだ。
(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2025/12/10/rights-on-borrowed-time.html
スリランカ:
https://dailynews.lk/2025/12/06/editorial/909005/the-heavy-cost-of-the-disaster/












