第3次世界大戦への道を進むのか トランプ米政権を見る世界の目
終わらない戦争とパワーゲームに深まる懸念

  • 2025/4/14

 ウクライナをめぐる戦闘が続くなか、アメリカ、ロシア、そして欧州諸国など国際社会では駆け引きが続いている。終わらない戦争とパワーゲームの影で、「第3次世界大戦」への道ではないかという懸念も聞こえてくる。

©White House Rapid Response / wikimediacommons

インドネシアは新たな世界秩序の混乱を危惧

 インドネシアの英字紙ジャカルタポストは3月6日、「新たな世界秩序の混乱」と題した社説を掲載した。

 社説は、「世界が21世紀初の長期化する混乱に突入しているなか、トランプ米大統領は、人為的な危機、さらには第3次世界大戦を引き起こす大きな役割を果たした指導者として歴史に名を残すことになるだろう」と述べる。

 さらに、「ホワイトハウスで行われたトランプ大統領とゼレンスキー大統領との混乱した二者会談によって、アメリカの好戦主義が大々的に明らかになった。ロシアがウクライナに侵攻したことが明白であるにもかかわらず、トランプ大統領はゼレンスキー大統領がウクライナ戦争のきっかけを作ったと非難した」と指摘し、トランプ米大統領の「好戦的」な姿勢に懸念を示す。

 そのうえで社説は、米国がロシアを中国から「引き離そう」としてロシアのプーチン大統領と良好な関係を築こうとしている一方、中国経済に大きく依存しているロシアのプーチン大統領は、中国を失うことを「最も避けたい事態」だと考えていることや、NATOをはじめ、緊密な同盟国に対しても威嚇や恫喝を続けるトランプ大統領への信頼が「急速に失われつつある」ことなどを指摘。「ウクライナに限らず、トランプ大統領の戦略が思い通りには進んでいない」との見方を示す。

 最後に社説は、「トランプ氏の扇動に乗れば、インドネシアは容易に食い物にされかねない」と注意を喚起し、「プラボウォ大統領は、ワシントンが反米とみなすグループ(編集部注:BRICSなど)で過激な発言を控え、米国と対峙する強固なチームを結成するなど、トランプ大統領に対して戦略的なアプローチを取る必要がある」と指摘。「他の国々と同様に、インドネシアも新たな世界的な混乱状態に備えなければならない」と訴えている。

スリランカは欧州と米国の特別な関係の崩壊に警鐘

 スリランカの英字紙デイリーニュースの社説は、「欧州と米国の特別な関係」が崩壊の危機に瀕している、と警鐘を鳴らす。

 社説は、ホワイトハウスにおけるトランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談が決裂したことについて、「過去3年にわたり巨大な隣国と戦争状態に置かれている国の指導者に対して、米国大統領が公開の場で恐喝した前例のない出来事が世界中に中継された」と振り返る。そのうえで、「この醜い展開に衝撃を受けた世界の指導者は、トランプ大統領を怒らせるリスクを避けようと慎重に言葉を選びながらも、すぐにゼレンスキー大統領を擁護した」と、国際社会の反応を分析した。

 他方、社説は「ウクライナと欧州諸国はまだ米国を見限ってはいない」との見方を示す。「ゼレンスキー大統領は、米国との関係の断絶は、いずれ修復できると信じており、ヨーロッパの指導者たちも、モスクワとの停戦合意の締結に向け、信頼できるパートナーとして米国の参加を強く望んでいる。トランプ大統領が言うように、犠牲者のさらなる増加を防ぐためにも、戦争は一刻も早く終結させなければならない。すでに死者は100万人を超えているのだから」

 そのうえで社説はこうも指摘し、警鐘を鳴らす。「戦争はすでに4年目に突入した。これからも解決策が見出せないまま戦争が長引けば、トランプ大統領が執務室で発した不吉な第3次世界大戦の警告が現実のものとなる可能性がある」

 

(原文)

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2025/03/06/a-new-world-disorder.html

スリランカ:

https://www.dailynews.lk/2025/03/05/editorial/735413/europe-at-a-crossroads/

 

関連記事

 

ランキング

  1.  民族をどうとらえるか―。各地で民族問題や紛争が絶えない世界のいまを理解するために、この問いが持つ重…
  2.  第2話では、ヨルダンの首都・アンマンに住むパレスチナ人二世シナーンさんの話を通じて、パレスチナ問題…
  3.  トランプ米大統領が打ち出す相互関税、いわゆる「トランプ関税」が世界を震撼させている。4月9日に発動…
  4.  2月23日に行われたドイツの連邦議会選挙によって、極右政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」…
  5.  世界の人道支援に対して貢献してきた米国。しかし、今年1月に就任した共和党のトランプ大統領は、民主党…

ピックアップ記事

  1.  民族をどうとらえるか―。各地で民族問題や紛争が絶えない世界のいまを理解するために、この問いが持つ重…
  2.  民族をどうとらえるか―。各地で民族問題や紛争が絶えない世界のいまを理解するために、この問いが持つ重…
  3.  2025年3月28日(金)日本時間15時20分ごろ、ミャンマー中部でマグニチュード7.7の大地震が…
  4.  ドットワールドと「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロス…
  5.  民族をどうとらえるか―。各地で民族問題や紛争が絶えない世界のいまを理解するために、この問いが持つ重…
ページ上部へ戻る