失望のCOP30 「気候債務」の返済を求める途上国の声
パリ協定から10年 進まぬ気候変動対策に苛立つ南アジア諸国

  • 2025/12/18

 ブラジル北部の都市ベレンで、国連気候変動枠組み条約の第30回締約国会議(COP30)が11月22日まで開かれた。国際的に約束された気候変動対策の枠組みである「パリ協定」が採択されてから10年という節目であったが、アメリカの不参加など波乱の会議となり、「成果は乏しかった」というのが一致した見方だ。

 2015年12月にCOP21で採択されたパリ協定は、産業革命前からの世界の平均気温上昇を1.5度に抑えるという目的を掲げている。その方策として、COPでは「化石燃料からの脱却」が主要テーマとなった。たとえばCOP28では、脱化石燃料について合意をしたものの、産油国を中心に反対は根強かった。今回のCOP30でも、脱化石燃料のための「ロードマップの作成」が提言されたものの、賛同は80カ国にとどまり、化石燃料の段階的廃止に関する具体的な合意は見送られた。

COP30開催地ベレンにて演説するアントニオ・グテーレス国連事務総長 (2025年11月20日撮影)(c) Wikimedia Commons

2035年では「遅すぎる」 貧弱な成果を嘆くパキスタン

 気候変動により最も深刻な影響を受けるのは、グローバルサウスの途上国だ。

 なかでも、全国的に洪水被害に見舞われているパキスタンは、脆弱な国々への支援を強く訴えている。パキスタンの英字紙ドーンは、11月26日付で「COP30への失望」と題した社説を掲載した。

 社説は、「COP30は、目指した成果からほど遠い結果に終わった。国連が『貧弱な成果』だと厳しい評価を下したことは各国政府に対する公然の批判であり、会議の欠陥を露呈させた」と、厳しい論調で指摘した。

 続いて社説は、今回のCOP30が「異例の背景」で開催されたと指摘し、その理由を列記する。第一に、アメリカが交渉に参加しなかった。また、中国が二酸化炭素の排出量についてピークに達する可能性を示唆したことも異例である。さらに、これまで100カ国以上が気候対策を強化する形で改定したものの、内容は不十分であったなか、COP30では脱化石燃料に向けた進展が「小幅」なものにとどまり、「深い地政学的分断」が今回の会議の雰囲気を形作ってしまった、と嘆く。

 「パキスタンにとって影響は特に深刻だ。気候対策のための計画は策定しているものの、資金の調達は厳しい。2035年までに(気候変動の影響を受ける途上国への)資金を3倍にする、という国際的な公約は歓迎すべきものだが、熱波や水不足の問題が年々厳しさを増し、洪水後の復興もいまだ不十分なパキスタンにとって、2035年は遅すぎる」

気候変動の「債務の罠」に陥ったバングラデシュ

 パキスタンと同様に、サイクロンや洪水、干ばつなど気候変動による危機に直面するバングラデシュでも、COP30での議論の行方が注目されている。英字紙デイリースターは、社説で「グローバルサウスの気候債務負担を軽減せよ」と訴えた。気候債務とは、主に気候変動の原因を作ってきた先進国などが、その影響により苦しむ国々、主に途上国に対して負う、いわゆる道義的な負債のことだ。近年、途上国はCOPにおいて、先進諸国に対してこの気候債務の返済を求めている。

 「バングラデシュは、温室効果ガスの排出量において、世界で最も責任の少ない国の一つだ。それにもかかわらず、気候債務が増え続けていることは苛立たしい。皮肉なことに、バングラデシュは気候変動の影響を最も受けやすい脆弱な国の一つでもあり、すでに数百万人の国民が影響を受けている」と、社説は憤懣をあらわにする。

 さらに社説は、「バングラデシュが、二酸化炭素1トンあたり29.25ドルを借り入れなければならないというのは非論理的だ」として、バングラデシュが気候変動対策における「高リスクの債務の罠」に陥っている、と主張する。

 「気候危機の最大の要因である富裕国は、グローバルサウス諸国への影響に対する責任を負う。その責任を果たすためには、途上国の債務負担を軽減し、気候変動の影響を緩和する資金を提供するという、断固たる行動をとらねばならない。排出量に対する責任を果たしてこそ、富裕国は公平性を確保し、最も危険に晒されている人々を守ることができるのだ」

 

(原文)

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/reduce-global-souths-climate-debt-burden-4033306

パキスタン:

https://www.dawn.com/news/1957410/cop-disappointment

 

関連記事

 

ランキング

  1.  軍事クーデターの発生からまもなく丸5年が経過しようとしているミャンマーで、昨年12月末から3段…
  2.  5年前にクーデターで政権を奪ったミャンマー国軍が2025年12月末、総選挙を開始した。今月下旬にか…
  3.  日進月歩の人工知能(AI)によって、人間の労働者が大量に置き換えられる日は近い――。そんな研究結果…
  4.  ドットワールドと「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロス…
  5.  長年にわたり独裁体制を敷いていたシリアのアサド政権が2024年12月に崩壊して丸1年が経った今、中…

ピックアップ記事

  1.  2021年2月のクーデターで国軍が全権を握ったミャンマーで、今月28日から2026年1月にかけて、…
  2.  2023年10月7日、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルへ大規模…
  3.  ドットワールドと「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロス…
  4.  日本に住むミャンマー人家族の物語を描いた『僕の帰る場所』や、ベトナム人技能実習生を題材にした『…
  5.  現代アートの世界的な拠点として知られるドイツの首都ベルリンでは、1998年から隔年で現代美術の国際…
ページ上部へ戻る