衰退する米国 大統領選を見つめるアジアの冷静な視線
「民主党か共和党かは重要ではない」との論調も
- 2024/8/18
アメリカのバイデン大統領は7月下旬、来たる11月の大統領選挙での再選を断念し、自身の後継者としてカマラ・ハリス副大統領の支持を表明しました。8月6日には民主党がカマラ・ハリス副大統領を正式に大統領候補に指名し、選挙戦は暗殺未遂事件で負傷したトランプ前大統領とハリス氏の一騎打ちの構図となりました。一連の事態をアジアはどう報じたのでしょうか。
「アメリカは中国を動かせない」インドネシアの指摘
インドネシアのジャカルタポスト紙は7月23日、「検察官vs受刑者」と題した社説で、この話題を取り上げた。
社説は、バイデン大統領が再選を断念したことを受けて、「世界の指導者たちは自らの立場を計算し直している」と述べる。また、トランプ氏の勝利が濃厚になった時点で、バイデン氏が「自らの野心を犠牲にして、党とアメリカ国民のより大きな利益のために決断した」として、政治家としてのバイデン氏の才能は称賛に値する、と評した。そして、世界はバイデン氏から学ぶものがある、と指摘する。「東南アジアも含め、世界中の年長の指導者たちは、職を追われる前に、自らの去り際を知る必要がある」
一方、ハリス氏については、「現政権を支える一員として優位に立つ可能性があるが、女性であり有色人種であるという事実を考慮すると、困難にも直面するだろう」と見る。トランプ氏は「白人至上主義や男らしさなどの議論を操作することに長けているから」だ。
ところで、米大統領選の行方は、インドネシアにどのように影響するのだろうか。社説は、「アメリカの次期大統領が民主党であろうが共和党であろうが、重要ではない」という。その理由として、「インドネシアはアメリカに依存しなくても生き抜く手段がある」と述べる。さらに社説は、アメリカが今も世界最大の経済・軍事大国であると認めながらも、「もはや中国に命令できる立場にはない」として、アメリカの影響力が衰退していることをはっきりと指摘する。また、「少なくとも過去10年間、アメリカは他国の内政に干渉することに積極的ではなくなってきている」と述べ、大統領選の結果はインドネシアに大きな影響を与えないだろうとの見方を示した。
「子どものいない人生は惨めか」変わりゆくインド
一方、インドの英字メディア、タイムズオブインディアは7月26日、共和党の副大統領候補であるJ.D.バンス上院議員の発言をとり上げ、「バンス、冗談でしょう?」というタイトルの社説を掲載した。
社説が取り上げたのは、バンス氏の2021年の発言だ。テレビのインタビューに答えたバンス氏は、ハリス副大統領のことを「子なしの猫好き女性」と呼び、「子どものいない惨めな人生を自ら選んだ人間が、米国をも惨めにしようとしている」と主張したのだ。
社説は、バンス氏のこの発言を引用したうえで、こう批判する。「子どものいない女性、連れ子のいる女性、猫を飼っている女性、そして彼女たちの多くの支持者が立ち上がり、こう叫んでいる。『おい、J.D.、おまえはとんでもない勘違いをしているぞ』と」
さらに社説は、アメリカ人女性の5人に1人は出産経験がなく、アメリカの3世帯に1世帯が猫を飼っているという統計を紹介しながら、バンス氏の「読み違い」を指摘したうえで、「インドでこのパンチを繰り出せば、うまくいったのに」と皮肉っぽく指摘する。インドでは子どものいない女性が差別されているためだ。
もっとも、そのインドでも、変化は起きつつある。子どものいない既婚女性の割合が増加しているのだ。社説は「教育や女性に対するエンパワメントが奏功したのではないか」との見方を示す。
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トランプ氏の暗殺未遂、バイデン氏の大統領選撤退など、アメリカ大統領選は大波乱の様相だ。しかし、インドネシア紙の社説に見るように、世界は候補者たちを意外にも冷静に見ているようだ。
(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2024/07/23/prosecutor-vs-convict.html
インド:
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/vance-you-kidding/