異常気象はもはや「想定外」ではない 問われる政府の備え
ネパール紙とフィリピン紙が訴える、災害に強い社会づくり

  • 2026/10/17

 8月26日、ネパールと中国の国境付近で大規模な土石流と洪水が発生し、甚大な被害をもたらした。ネパール紙によると、死者は10月6日時点で少なくとも1455人、行方不明者も5000人以上に上った。外国人観光客も多数巻き込まれ、観光産業への影響が広がっている。

 一方、フィリピンでは、エルニーニョ現象による猛暑や干ばつ、豪雨などが人々の健康や暮らしを脅かすことへの懸念が高まっている。

 災害からの復興を急ぐネパールと、予測される危機への備えを迫られるフィリピン。両国の新聞は、自然災害や異常気象をもはや「想定外」として片づけることなく、被害を最小限に抑えるための具体的な対策を政府に求めている。

干ばつによって乾燥し、ひび割れたフィリピンの大地 (c) Circuit Occidental / pexels

観光客を呼び戻すだけでは不十分

 ネパールの英字紙カトマンドゥポストは、9月28日付の社説で、観光客の受け入れを再開するだけではなく、次の災害に耐えられる観光システムを構築するよう呼びかけた。 

 ネパールではモンスーンシーズンが終わりに近づき、本来なら観光客でにぎわう季節を迎えている。しかし、8月の土石流と洪水以降、主要な観光地では閑散とした状態が続いているという。

 観光産業は、ネパールの経済生産の7%近くを占め、100万人以上の雇用を生み出している。観光客が来ないということは、ガイドやポーター、飲食店、交通機関など、観光に携わる多くの人々の生計が脅かされているということだ。

 ネパールの観光産業は、これまでも幾度となく危機に見舞われてきた。2015年の大地震、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大、そして2025年のZ世代の若者たちによる抗議行動だ。

 それでも、観光産業は過去の危機から回復してきた。社説は、こうした回復力を評価し、今回の土石流もまた、時間はかかっても観光客は戻ってくる、と見ているようだ。

 その一方で、表面的な回復だけで満足してはならないと警鐘を鳴らす。観光客が戻っても、災害で収入を失った人々が海外への出稼ぎを余儀なくされたり、女性起業家が経済的な自立を失ったりすれば、地域社会が本当の意味で回復したとはいえないからだ。さらに社説は、一つの地域が災害に見舞われても観光産業全体が停滞しないよう、観光地や観光シーズンの多様化も求めている。

 「ネパールは自然災害にぜい弱であり、気候変動に関連するリスクが年々高まっている。我々は現実を踏まえ、観光インフラ、トレッキングルート、道路、通信システム、そして緊急対応体制を設計すべきである」

 観光客を呼び戻すだけではなく、次の危機が訪れても地域の暮らしと観光産業を守れる仕組みをつくること。 それこそが、真の復興につながるというのが社説の主張だ。

エルニーニョは「予期せぬ緊急事態」ではない

 気候変動の影響が、一時的なものでは済まされないことを、私たちはすでに知っている。日本も見舞われた今年の異常気象は、これから毎年のように繰り返され、もはや珍しいことではなくなるのかもしれない。フィリピンの英字紙デイリー・インクワイアラーは、9月27日付の社説で、こうした異常気象への備えを政府に求めた。

 社説によれば、今年フィリピンを襲った猛暑は「単なる警告ではない」という。フィリピン大気地球物理天文局(PAGASA)は9月下旬、エルニーニョ現象が9月から12月にかけて非常に強まり、2027年前半まで続く可能性があると発表した。地域によっては降水量が平年を下回り、干ばつや水不足などが深刻化するおそれがあるという。

 猛暑は、人々の健康と暮らしにさまざまな影響をもたらしている。熱中症や慢性疾患の悪化に加え、水不足に備えて家庭で水をためることで、デング熱やチクングニア熱など、蚊が媒介する感染症のリスクが高まることも懸念されているという。

 農業への影響も深刻だ。干ばつによる収穫量の減少は食料価格の高騰につながり、コメ、サトウキビ、ココナッツなどの生産にも影響が出ているという。

 社説は、こうした被害がさらに拡大する前に、政府が具体的な対策を講じるよう求める。

 「エルニーニョは、すでに警告が出されていた以上、予期せぬ緊急事態ではない」

 社説はこう述べ、「危機が収拾のつかない国家的な緊急事態へと発展し、国民が再び政府の対応の遅れによる代償を負わされることのないよう、緊急かつ目的意識を持って行動すべきだ」と、強い言葉で訴えている。

                       *

 ネパール紙が訴えるのは、災害からの復興を、単に元の状態に戻すことだけで終わらせず、次の危機に耐えられる社会の仕組みを築くことだ。一方、フィリピン紙は、すでに予測されている危機に対して、政府が被害の拡大を防ぐために行動するよう求めている。

 自然現象そのものを防ぐことはできなくても、被害を小さくするためにできることはある。

 危機が去った後に何を変えるのか。そして、次の危機が訪れる前に何を備えるのか。二紙の社説は、自然災害や異常気象と向き合う政府の責任を、それぞれの立場から問いかけている。

        

(原文)

ネパール:

https://kathmandupost.com/editorial/2026/09/28/welcome-tourists-back-but-build-resilient-systems-to-keep-them-safe

フィリピン:

https://opinion.inquirer.net/194698/preventing-an-el-nino-crisis

 

 

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