トランプ米大統領をノーベル平和賞に推薦したパキスタン政府に批判が噴出
「ご機嫌取り」で米国との関係強化と支援の獲得が狙いか
- 2025/7/28
パキスタン政府は6月21日、米国のトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦すると発表した。インドとの軍事衝突をめぐる停戦の仲介役を果たした、というのがその理由だが、インド側は、パキスタンとの停戦にあたり米国の関与があったことを否定している。パキスタン政府としては、米国との関係を強化したいという思惑があるようだが、この決定には国内から強い批判の声が上がっている。

アイオワ州で開かれた「サルート・トゥ・アメリカ・セレブレーション」でスピーチを終え、群衆に手を振るドナルド・トランプ大統領(2025年7月3日撮影) (c) The White House / wikimedia commons
地元英字紙は「パキスタン人の恥」と反発
パキスタンの英字紙ドーンは6月22日付の社説で、この推薦を「茶番だ」と強く批判した。
社説はトランプ氏が、オバマ元大統領がノーベル賞を受賞しているにも関わらず、自分が受賞していないことを長年悔やしがってきた、と指摘。トランプ氏は、自分がノーベル賞のリストに入っていない理由について、「賞の選考委員会がリベラルに偏っているからだと確信している」と伝えた。
そのうえで社説は、「パキスタン政府にとっては、トランプ氏がノミネートされない真の理由などどうでもよいのだ」との見方を示し、「パキスタンの支配層は、傷つきやすい自尊心のある権力者に対してご機嫌を取ることこそ、支援を得るための確実な戦略だと思っているのだ」と指摘する。
しかし社説によれば、パキスタン国民はトランプ氏を推薦することに対して盛り上がりを見せていない、という。それどころか、「今回の推薦は、パレスチナで無辜(むこ)の市民が虐殺されている最中に発表された。このジェノサイドの後ろ盾となっているのは、トランプ大統領率いる米政府によるイスラエル政府への武器供給であるにも関わらず、パキスタン政府がトランプ大統領に象徴的な屈服をしたことに、多くの国民は失望と恥辱を感じている」と、憤りを隠さない。
社説はさらに、パレスチナ問題のみならず、トランプ氏の国内外での振る舞いが、いかにノーベル賞に「ふさわしくないか」を列記する。
「アメリカ国内では、人種、性別、移民に対する保護措置を撤廃して批判を浴びている。また、極右や陰謀論者を擁護する一方、自由な報道を“フェイクニュース”や“国民の敵”と呼んで攻撃している。一方、海外でも、ぜい弱な国に対して侮辱的で軽蔑的な発言を繰り返し、独裁的な指導者を公然と称賛している。このような人物がノーベル平和賞の候補に推薦されるのは、国際的に見ても荒唐無稽であり、パキスタン人がこの恥辱を背負わなければならないことは、不幸としか言いようがない」
推薦発表の翌日も米国はイランを攻撃
パキスタン政府がノーベル平和賞への推薦を発表した翌日、米国はイランの核関連施設を攻撃した。これを受けて、ドーン紙は米国によるイラン攻撃を強く批判する社説を続けて掲載した。
まず、6月23日には、「米国の侵略」と題した記事を掲載。アメリカがイランの核施設を攻撃したことで「世界の地政学的・経済的秩序に影響を及ぼす、長く破壊的な戦争のプロセスが始まった」と、強く非難した。
さらに、6月25日には、「不安定な平穏」と題して、中東での対立が落ち着きを取り戻しつつあるとしながらも、「この停戦がどれほど続くのか?」と疑問を呈した。そのうえで社説は、「トランプ氏がこの紛争を終わらせる決意があるのなら、まずはイスラエルを抑制する責任がある。彼は、自身のSNSでイスラエルに対して爆弾を投下しないよう呼びかけたが、ソーシャルメディアに投稿するだけではイスラエルは正気に戻らない。米国はイスラエルに対する資金と武器の供給を停止するべきだ」と指摘。停戦にかけるトランプ大統領の本気度に懐疑的な目を向けている。
パキスタン政府によるトランプ大統領のノーベル平和賞への推薦については、米国政府からの反応も含め、大きな動きは見られない。「国民の恥」とまで書かれたパキスタン政府の判断だが、ご機嫌取りの「見返り」は期待できなさそうだ。
(原文)
パキスタン:
https://www.dawn.com/news/1918915/farcical-nomination
https://www.dawn.com/news/1919272/us-aggression
https://www.dawn.com/news/1919899/uneasy-calm












