マイクロプラスチックが空を舞う
命を脅かす海と空の汚染
- 2023/6/17
地球全体で環境保全に取り組むことが、私たち人類の生存に不可欠であることに、今や異論はないだろう。しかし、世界では毎年のように新たな危険現象が発生し続けており、人間の生命や生態系への影響が懸念されている。
空を漂うマイクロプラスチック
フィリピンの英字紙インクワイアラーは5月14日付で「私たちが吸い込む空気にプラスチックが浮遊する」との社説を掲載した。
これは、プラスチックの微粒子「マイクロプラスチック」が、水中だけでなく、大気中にも浮遊する現象を指している。マイクロプラスチックは直径5ミリ以下の小さな粒子で、ペットボトルやポリ袋などが自然界で粉砕されて生じるほか、研磨剤などにも含まれている。中でも、大気中を浮遊するさらに微細なサイズのマイクロプラスチックは、SAMP(Suspended atmospheric microplastic)と呼ばれ、人体への悪影響や環境汚染が懸念されている。
社説によると、そのSAMPがフィリピンにも存在することが初めて確認された。しかも、調査対象となった16都市と1自治体の、すべての場所でその存在が確認されたという。中でもモンテルパ市とマンダルーヨン市はSAMPの濃度が最も高かった。
社説はまず、水中のプラスチックについて、「フィリピンにとって、マイクロプラスチックは深刻な問題だ。フィリピンは世界の海洋プラスチック廃棄物の3分の1以上を産み出している。食品の包装など、さまざまなプラスチック廃棄物が川や水路を詰まらせ、海に流れ、魚の体内に宿り、人間の体内に戻る」と述べる。
そして、大気中のSAMPについて、マイクロプラスチックの摂取が、肺組織にダメージを与え、肺がんなどの健康被害を引き起こす可能性を指摘。さらに地球環境に対するSAMPの影響にも触れ、「現時点では、SAMPの環境への影響はほとんど知られておらず、その全容を調査し、最小限に被害を食い止める方法を研究する必要がある」と述べた。
「マイクロプラスチックは、『マイクロ』という名前とは逆に、重大な汚染物質だ。早急に調査し、対処しなければ、環境と人々の健康に甚大な影響を与える。フィリピンの人々が高い代償を払う前に、政府はすぐに行動を起こさなくてはならない」
海面の温度上昇が止まらない
一方、シンガポールの英字紙ストレーツタイムズが5月8日付の社説で取り上げたのは、海洋の表面温度上昇の問題だ。
社説によると、地球の海洋表面温度は、2023年1月以降上昇の一途をたどり、4月上旬には記録的なレベルに達したという。この傾向は5月も変わらず、記録的な水準に近い高温が続いている。社説は「一部の科学者たちは、これから起きる最悪の事態を予感している」と警戒感を示す。
社説が特に懸念するのは、今年、世界がラニーニャ現象からエルニーニョ現象に移行する予測だ。これにより、気温の急上昇が誘発され、さらに海水温と陸水温の上昇に拍車がかかるという。社説は、海洋の表面温度の上昇を食い止めるためには、温室効果ガスの排出量を迅速かつ大幅に削減することが必要だ、と指摘している。
木を伐る前に100回考えよ
バングラデシュの英字紙デイリースターは5月11日付けの社説で、「私たちは樹木を破壊するのではなく、守らなくてはならない」と題した記事を掲載した。
社説は、コンクリートに覆われたダッカの街で、都市の「美化」として古い街路樹が伐採されていることを批判。環境保護活動家や専門家もこれに抗議しているとして、ある専門家のこんなコメントを紹介した。「ヒートアイランド化し、大気汚染に日常的に悩まされている都市は、樹木を伐採する前に『100回』考えなければならない」。
そのうえで社説は、「『美化』というが、樹木のないところに美しさなどあるだろうか。こうした活動は、自殺行為だ」と、強い言葉で当局を行動を批判した。
多くの国において、環境保護は、かつてのように経済活動と「天秤にかける」のではなく、喫緊の最優先課題となっている。特に気候変動の影響を受けやすい発展途上国や貧困層の人々にとっては、バングラデシュ紙が指摘するように死活問題になっているのだ。
(原文)
フィリピン:https://opinion.inquirer.net/163112/plastic-in-the-air-we-breathe
シンガポール:https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/warming-oceans-spell-trouble-ahead
バングラデシュ:https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/we-must-save-our-trees-not-destroy-them-3315331