台湾地方選の与党大敗に見る有権者の選択
「蔡英文後」の中台関係と東アジアの行方を読む

  • 2022/12/3

次期総統と国際社会

 そうした状況で始まる2024年の台湾総統選は、やはり中台関係や安全保障が争点になるとみられる。まさしく「抗中保台」か「国共和平協議」か、あるいは「台湾有事」か「平和統一」かの選択を有権者に問う選挙になろう。過去の選挙では、中国が軍事的に恫喝すればするほど台湾有権者は反中に動く傾向があった。しかし、ロシアによるウクライナ戦争の長期化と膠着を目の当たりにし、戦争というものがより身近になった今、「抗中保台」は、経済や社会福祉、個人の権利をある程度犠牲にする徴兵制の延長や防衛費増の話とセットになることを人々は気付いた。民進党が主戦派、国民党が和平派というイメージ戦になれば、必ずしも民進党の追い風にはならないかもしれない。

台北市長を国民党が奪還し、歓喜する支持者(筆者撮影)

 「台湾総統を決めるのは米国だ」。9月に台北で台湾独立建国連盟に集う青年たちと意見交換を行った時、彼らは冗談っぽく、そう口をそろえた。台湾の未来は台湾人の意思だけで選択できない現実がある。その時の米国の対中政策や中国の対外姿勢、国際社会の有り様などが、台湾有権者の選択に影響を与えることになるだろう。

台湾のシンボルである101タワー(筆者撮影)

 その一方で、2024年台湾総統選挙が東アジアの民主と自由と人権の行方を左右すると考えれば、日本としても関心を持つべき重要な選挙になると考えるべきだろう。
 

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