爆弾犯をとらえろ
タイ、新政権試す連続爆破事件

  • 2019/8/16

 タイのバンコクとノンタブリで8月初旬、時限装置による不審火や連続爆破事件が相次いだ。地元紙などによると、10人以上が関与した事件とみられている。不審火があったのは、バンコクの「サイアムスクエア」などのショッピングセンターや市場、爆破があったのは政府合同庁舎前やタイ軍本部前、ノンタブリ県の国防次官事務所前など。死者はおらず、4人が負傷した。

 8月4日付のバンコクポストの社説は、この事件を「発足したばかりのプラユット・チャンオチャ政権と、その治安担当者への挑戦である」として、治安対策の甘さを指摘した。

2019年8月2日、タイ・バンコクの4カ所で爆発が発生した。アセアン外相会議が開かれ、各国の要人が集まっているタイミングを狙っての連続爆弾テロと見られている。事件後、各現場では厳重な検証作業が行われた(写真:AP/アフロ)

タイ深南部の紛争

 社説では今回の事件について専門家の分析をこう書いている。「専門家たちによれば、東南アジア諸国連合(ASEAN)会議期間中を狙った今回の攻撃はよく計画され、組織されたものである。また、標的となった場所も、タイ軍施設、ハイエンドのショッピングモール、ラッシュアワーのBTSスカイトレインの駅など、戦略的だ」。また、使用された爆弾や時限発火装置については「大量殺人を狙うというよりも、パニックを引き起こすことを目的としたようだ」と、している。

 今回の連続爆破放火事件については、タイ深南部での紛争と結び付ける見方が浮上している。タイは仏教国であるが、深南部のパタニ、ヤラー、ナラティワートを中心とする地域には、マレー系ムスリムが数多く住む。ここでは150年以上前から、中央政府による武力制圧に対する抵抗運動があり、南部の独立や自治権を求めて、暴動やテロが相次いでいる。特にタクシン・シナワトラ首相在任時の2004年以降は、暴動が激化。モスクに立てこもるなどした反政府武装勢力100名以上をタイ国軍が殺害した事件や、拘束されたデモ参加者78名が軍へ移送中に窒息死させられた事件などがあり、深南部の状況は泥沼化した。和解も何度も試みられたが、対立は解消していない。Asia Peacebuilding Initiatives掲載の論文によれば、2004年以降の10年間で、南部紛争による死者は6000人、負傷者は1万人を超えるという。

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