南アジアの女性をめぐる不平等で危険な現実
政治にも社会にも見過ごされてきた「女性の安全」

  • 2024/12/2

 ジェンダー格差が顕著とされる南アジア。女性たちが置かれている状況について、バングラデシュ、ネパール、インドのメディアがそれぞれの社説で論じた。

(c) Amruta Mahakalkar / Unsplash

バングラデシュの女性を暴力から守れ

 バングラデシュの英字紙デイリースターは10月9日付で「女性の安全は軽視されているのか」と題した社説を掲載した。
 社説によれば、バングラデシュの女性たちは、身体的な暴力や暴言、オンラインでのヘイトスピーチなど、さまざまな種類の「攻撃」にさらされている。しかし、これを取り締まるべき警察は「依然として存在感がなく、法的措置も不十分」だという。社説は、こうした無策が「いやがらせの加害者を勢いづかせている」と指摘する。
 「一部のグループの間で無法状態がまん延し、“女性に対する嫌がらせは罰せられない”という考えが広まっている。当局は、目に見える形で積極的に法を執行する必要がある」
 バングラデシュは、政変を経て、新たな政権が社会改革に乗り出している。社説は「女性の安全についての問題も、その中に含めることが不可欠だ」と主張する。

いまだ下がらぬネパールの妊産婦死亡率
 ネパールの英字紙カトマンドゥポストは、10月16日付で「危険な出産」と題した社説を掲載した。
 社説は「妊娠は女性にとって希望に満ちた出来事だが、残念ながら多くのネパール人女性にとって悲劇的な経験にもなり得る」と嘆く。出産時に命を落とす女性が多いのだ。
 社説によると、ネパールの妊産婦死亡率は、1996年には10万人あたり539人だったが、2016年には239人にまで減少した。これは称賛に値する成果だったが、それ以降は大きな改善が見られないという。持続可能な開発目標(SDGs)を達成するためには、2030年までに妊産婦死亡率を10万人当たり70人にまで減らす必要があるが、その道のりは遠い。
 社説は、ネパールにおける妊産婦死亡の主な原因について「分娩後の出血と、妊娠期の高血圧性疾患」と見ている。しかし、改善に不可欠な医療システムは十分に整備されていると言えず、インフラだけでなく、医療従事者や医療用品も著しく不足しているという。
 「若い母親たちが健康でいられなければ、次世代の未来、ひいては国の未来を危機にさらすことになる」。社説はこう強調し、妊産婦が安全に妊娠・出産できるように、国を挙げて取り組むべきだと訴えている。

結婚によってインド人女性が失うもの
 「結婚により女性がペナルティーを支払うことになる」。インドの英字メディア、タイムズオブインディアは、10月16日付の社説でこう述べた。
 社説は、「結婚が、数えきれないほどのインドの若い女性から経済的自立のチャンスを奪っている」と主張する。例として、インドの女性の就業率は、結婚後に12ポイント低下するという。社説は、「結婚すると、女性はペナルティーを支払うことになる。子どもが生まれると、女性はさらにペナルティーを支払う。結婚や母親業により、女性の仕事面での可能性は狭まる。しかも、それは女性にのみ適用され、配偶者である男性は何の影響も受けない」と述べ、結婚による負担が女性にのみ犠牲を強いているという不平等な現状を指摘した。
 社説は、政府も社会も、この事実を「見過ごしてきた」と批判する。「結婚が当たり前とされるインドでは、あまりに多くの女性が、教育を終えて経済的な自由を手に入れても、結婚によってすぐにそれを手放さなければならない」
 これはインドだけではなく、また、途上国だけの話でもない。経済的に豊かな国でも起きていることだと言えそうだ。

 

(原文)
バングラデシュ:https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/womens-safety-issue-being-sidelined-3723431

ネパール:https://kathmandupost.com/editorial/2024/10/16/unsafe-motherhood

インド:https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/bringing-up-husband/

 

 

関連記事

 

ランキング

  1.  アメリカのトランプ大統領とロシアのプーチン大統領があいついで中国・北京を訪問し、習近平国家主席…
  2.  アメリカとイランの戦争は、不安定な停戦に入ってなお予断を許さない状況にあります。アメリカ在住の…
  3.  2024年7月から8月にかけて若者らの抗議活動が激化し、当時のシェイク・ハシナ首相率いるアワミ…
  4.  1990年代初頭、内戦の傷跡が色濃く残るカンボジアに足を踏み入れた一人の日本人がいました。学校づく…

ピックアップ記事

  1.  30年前、内戦直後のカンボジアで、戦火をくぐり抜けて残った数本の在来種の胡椒の木を大切に育てる老農…
  2.  少数派イスラム教徒ロヒンギャの人々の証言を基に紡がれた映画『LOST LAND/ロストランド』…
  3.  ドットワールドと8bitNewsのコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロスメデ…
  4.  世界の映画祭を巡りながら、観る者の心を静かに、そして確実に揺さぶっている映画が4月24日より一般公…
  5.  タイで昨年、これまで認められていなかったミャンマー人難民の就労を認める制度が始まりました。北西…
ページ上部へ戻る