『月刊ドットワールドTV』#3 中国に詳しい福島香織さんをゲストに招き配信
米大統領選後の国際情勢と台湾海峡危機について考える

  • 2024/11/27

 ドットワールドとインターネット上のニュースサイト「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロスメディア番組『月刊ドットワールドTV』が3回目のライブ配信を行いました。ナビゲーターを務めるドットワールド編集長の玉懸光枝が、中国に詳しいジャーナリストの福島香織さんを番組初のスタジオゲストに招き、8bitNewsの構二葵さんとともに伝えました。

トランプ氏の再選を受けて中国の習近平政権はどう動くのか

 3回目となる番組は、「米大統領選後の国際情勢 強まる台湾海峡危機」と題して、11月26日の日本時間21時から8bitNews上で配信されました。

 ゲストトーク「ドットワールドCross」では、11月初旬に米国で行われた大統領選挙でトランプ候補が再選したことを受けて今後、予想される世界の動きを論じた「米大統領選後に訪れる台湾海峡の危機」の筆者、福島香織さんをゲストに迎えて対談しました。

 福島さんはまず、「ロシアとウクライナの戦争を自分なら1日で終わらせることができると豪語していたトランプ氏が当選したことで、米国はウクライナ支援から手を引き、ウクライナは終戦に向けた交渉をせざるを得なくなる」との見方を示しました。そのうえで、「世界は今後、平和に向かうのかといえば、そうではない」と断言。「特に、日本にとっては、これまで東欧という、どこか遠いところで起きていた戦争が、東アジアに移ってくるかもしれないことを覚悟しなければならない」と述べました。

 また、中東情勢についても「トランプ氏はバイデン政権ほどこの地域を重視していない。イスラエルともある程度距離を置き、いったん落ち着かせる方向に向かうのではないか」と指摘し、その目的として「最大の脅威である中国に焦点を合わせている」と分析しました。

 さらに、東アジア情勢との関係について「ロシアとウクライナの戦争が“ウクライナが勝利しない形”で終わった場合、全面的にウクライナ支持を掲げていた台湾への影響は避けられない」「ウクライナに割かれていた米国の軍事的な資源が、インド太平洋地域の最もホットな台湾海峡に投入されるとなれば、台湾としても心穏やかではいられない」と指摘した福島さん。ウクライナや中東の戦争を早期に終わらせようとするトランプ氏の狙いについて「中国をルールメーカーとする国際社会を創ろうという野望を抱く習近平政権への強い危機感から、今のうちにデカップリングしようとしている」と解説する一方、習近平政権については「米国の大統領選挙の行方を事前に分析し、トランプ氏の再選を見越して戦争準備の指示を出しているとの指摘もある」と述べました。

 台湾情勢の行方については、「台湾が国家として認められるか、中国に併呑されるかは(今年5月に発足した)頼清徳政権のここ数年の取り組み次第だ」とコメントしました。

戦火を生きるウクライナ市民を伝えるジャーナリストの思い フェイクニュースとメディアについての議論も

 続いて、その他の新着記事を紹介する「ドットワールドUPDATE」として、「社会を読み解く」から「ジャーナリストの玉本英子さん「同じ時代を生きる人々に心を寄せる」」を取り上げました。ロシア軍の砲撃に日々さらされているウクライナの村や、ミサイル攻撃を受けた現場を訪ね、戦火を生きる市民の姿を記録しているジャーナリストの玉本英子さんと、2015年からウクライナで保健サービスの改善に取り組んできた世界の医療団(特定非営利活動法人 メドゥサン・デュ・モンド ジャポン)が10月下旬に都内で開いた写真展とギャラリートークの内容について、玉懸光枝が執筆した記事です。大国間の思惑という観点から戦争の行方を考えた前半とは対照的に、爆撃によって一瞬で日常を奪われる市民一人一人の悲しみや心の傷を伝え続ける玉本さんの思いを紹介しました。

 さらに、いま改めて注目したい記事をピックアップする「ドットワールドArchive」として、「報道を読む」から「イギリスで「人種差別反対」集会 偽情報の危険さを象徴」と「新興国で氾濫するフェイクニュースと闘うために」の2本を取り上げ、意図的に虚偽の情報を拡散させるフェイクニュースによって社会が容易に分断され得ることを強く危惧するパキスタンやインド、フィリピンの社説を紹介しました。

 これを受け、スタジオでは、市民が情報にどう接するべきかという論点に始まり、政府レベルの情報合戦や、メディアの役割と定義、負うべき責任の範囲、信頼回復に必要なことなど、ジャーナリズムの考え方についても議論が盛り上がりました。

                 *

 2019年7月にスタートしたドットワールドは、この夏、創刊5周年を迎えました。これまでのご愛読と応援に心から感謝いたします。節目のタイミングでご縁をいただいた8bitNewsとのクロスメディア番組「ドットワールドTV」を通じて、一層多くの方々に記事をお届けできれば嬉しいです。ぜひご視聴ください。

 ドットワールドはこれからも世界の人々から見た世界の姿や彼らが大切にしているもの、各国の報道ぶりや現地の価値観を喜怒哀楽とともに伝えることで、多様な価値観を理解し、違いを受容し合える平和で寛容な一つの世界を築く一助となることを目指します。引き続きどうぞ宜しくお願いします。

 

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