悪化するミャンマー危機 解決のカギは中国国境の情勢か
ロヒンギャへの残虐行為が繰り返される恐れも 問われる国際社会の役割

  • 2024/9/22

 2021年2月に国軍がクーデターにより実権を握ったミャンマーでは、少数民族武装勢力や民主化勢力と、国軍との間で武力衝突が続いており、特に国境地帯では情勢が悪化している。国軍内の求心力の低下もささやかれており、政情は不安定だ。

ミャンマー東部のカレン民族解放軍(KNLA)の支配地域 にあるキャンプで、ビルマ人民解放軍(BPLA)の新兵が訓練に励む。竹やぶに囲まれたこの場所では、主に20代の100人以上の若者が厳しい軍事訓練を受けている。元シェフから元ジャーナリスト、ラッパー、詩人まで、あらゆる階層の人々が、軍事政権を打倒するという目標を掲げ、抵抗運動に参加している。(2024年3月6日撮影)(c) ロイター / アフロ

中国との連携による問題解決を提案するインドネシア
 インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポストは8月28日付の社説で、インドネシア政府に対してミャンマー問題解決に向けた「ある提案」をしている。
 社説が提案したのは、「ミャンマーに平和を取り戻すために、インドネシアが外部勢力、特に中国を巻き込んで新たな外交を展開すること」だ。具体的には、10月で任期満了となるジョコ大統領が、ASEANの中で主導権を持ってこの課題に当たるべきだ、と述べている。
 ASEANは、ミャンマーで軍事クーデターが起きて以来、ミャンマー軍を正式なASEANメンバーとして認めていない。社説は「ASEANはミャンマー軍による政権を一時的に公式会合などから追放することを決定した。しかし、このような戦術に効果がないことはすでに明らかだ」と主張する。実際、インドネシアは昨年、ASEAN議長国としてミャンマー問題の解決に取り組んだが、進展はほとんど見られなかった。社説は「代替案を見つける必要がある」と、さらなる取り組みの必要性を訴える。
 では、社説が提案する「中国との連携」には、どんな背景があるのだろうか。社説は、「ミャンマーでは、誰が政権を握ろうと中国の影響力が強い」と説明。そのうえで、「ジョコ大統領は、中国の習近平国家主席と個人的に良好な関係を築いている」として、インドネシアの役割を示唆した。
 さらに社説は、ミャンマーと中国との国境地域の治安状況に目を向ける。中国の国境付近で反政府勢力が支配を固めつつある地域もあることを受け、「ミャンマー軍が中国の警告を無視したため、中国が憤慨しているという話もある」と述べる。
 そのうえで社説は、「自国民の安全に対する中国の懸念は、ミャンマーの状況を平和的に解決するための協議の出発点となり得る」と主張した。

ロヒンギャという「重荷」を背負うバングラデシュ
 一方、バングラデシュとの国境地帯では、ミャンマー国内から逃れたロヒンギャ難民の状況に懸念が高まっている。バングラデシュの英字紙デイリースターは、8月25日付で「ロヒンギャへの虐殺を繰り返さないために」と題した社説を掲載した。
 社説は、国連が「ミャンマーの情勢が非常に不安定になっており、2017年に行われたような残虐行為が繰り返される可能性が高まっている」と発表したことを引用しつつ、「深く懸念している」と述べる。また社説は、現在、バングラデシュとの国境沿いにあるラカイン州の状況が急激に悪化しており、戦闘から逃れようとした市民数百人が殺害されたとの情報もあると伝えている。
 2017年にはラカイン州で、わずか1カ月足らずの間に少なくとも6700人ものロヒンギャの人々が殺害された。国連の調査によると、虐殺に加え、集団レイプ、企業や学校への放火など、広い範囲での人権侵害があったとされる。これ以降、ミャンマーからバングラデシュに逃れ、難民キャンプで生活しているロヒンギャは、75万人に上ると推定されている。こうした事態を受け、ミャンマーとバングラデシュの間でロヒンギャを安全にミャンマーに帰すための対話が実施されたものの、進展はほとんど見られない。
 「バングラデシュはすでに自国の問題で精一杯であり、ロヒンギャへの支援を継続することが大きな負担となっている。私たちは、国際社会がミャンマー危機の解決にもっと積極的に取り組み、この”重荷”を軽減して地域に安定を取り戻すことを望んでいる」

(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2024/08/28/ris-new-myanmar-plan.html

バングラデシュ:
https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/prevent-repeat-rohingya-atrocities-3685396

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