COP27「損失と損害」支援基金の設立で合意
環境的公正に向けた第一歩をアジアはどう伝えたか

  • 2022/12/12

 エジプトのシャルム・エル・シェイクで11月6日から開かれていた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は11月20日、「シャルム・エル・シェイク実行計画」に合意して幕を閉じた。参加各国は、気候変動による「損失と損害」を受けた国々への支援を目的とする基金の設立などについて話し合った。

 「損失と損害」基金は、海面上昇など気候変動を原因とする異常気象や災害でダメージを受けた途上国を支援するために創設された。

(c) Matthew TenBruggencate / Unsplash

問われる基金の中身

 バングラデシュの英字紙デイリースターは、11月22日付の社説で基金創設について取り上げ、「環境的公正への第一歩だ」と一定の評価をしたうえで、「途上国への経済的支援だけでは地球を救うことはできない」と、問題点を指摘した。

 社説は、「COP27によって気候変動の影響と苦闘する貧しい国々を支援する基金の創設が決まったことは歓迎すべき展開だ」「報道によれば、予定時間を40時間も遅らせてようやく合意に至ったのだという。過去30年の気候変動に関する話し合いの中で、途上国がずっと求めてきたことがようやく実現する」と伝えている。

 ただ、決まったのは基金を創設するということだけであり、肝心の基金の規模や運用方法、そしてどの国がどの国に対して資金を拠出するのか、その判断基準などの運用規定は、2023年にドバイで開かれるCOP28まで持ち越されることになった。社説は「1992年に国連気候変動枠組み条約が締結された時には、温室効果ガス排出量の削減や他国への支援の義務を“開発途上国”には負わせないことが定められていた」とした上で、「今回のCOP27では、欧州連合(EU)が、中国やロシア、そしてサウジアラビアなどの中東産油国に対しても基金に資金を拠出するよう求めたが、これらの国々は拒否している」と報じている。

 また社説は、「基金の創設は喜ばしい前進だが、温室効果ガスの排出量制限についてはまだ目標に達していない」と述べ、「私たちは国際社会に対し、来年の会議で必ず損害と損失への支援基金を適切に設立することと、温室効果ガス排出制限について厳しいガイドラインを設けることを求める。経済的に発展した国々は、温室効果ガス削減のために新たな決意を示さなければならない」と、主張した。

最大の課題は資金源

 インドの英字メディア、タイムズオブインディア紙も、11月21日付の社説でCOP27の話題を取り上げた。

 同紙の社説も、「損害と損失」支援基金について「苦闘の果てにようやく生み出された重要な進歩」だと評価したうえで、「最大の課題は資金源だ」と述べた。

 また社説は、COP27で話し合われたもう一つの重要な合意として、「化石燃料からの移行」を挙げている。COP27が合意したシャルム・エル・シェイク実行計画では、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑える努力をすることと、そのためには2030年までに世界の温室効果ガス排出量を2019年比で43%削減する必要があることが、改めて記載された。しかし社説は、「合意内容を実現するためには、年間4兆から6兆ドルの投資が必要になる」と指摘し、「日本の昨年のGDPが4兆9千億ドルだったことや、世界が昨今、直面している経済的な苦境を考えれば、実現は相当難しいと言わざるを得ない」との見方を示した。

 そのうえで、パキスタンなどでこれまでにない規模で発生している洪水など、昨今、気候変動の影響がより深刻になっていることを背景に、「COP27はこれまでより危機感が募っていることが感じられた」と述べた。

地獄へのハイウエー

 シンガポールの英字紙ストレーツ・タイムズは、11月12日付の社説で、「世界は地獄へのハイウエーを走っている」というグテーレス国連事務総長のCOP27での発言を引用した。そのうえで、「気候変動への取り組みは、裕福な国と貧しい国の格差を是正する政治的な活動だ」「環境的公正こそが、世界が正常に動き続けるために必要なことだ」と指摘した。環境的公正とは、すべての人々が環境破壊による影響から平等に守られるべきだとする考え方だ。

 「人類は地獄へのハイウエーを走っている。なんとか減速して、生き延びねばならない」

 

(原文)

インド:

https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/finding-the-cash-funding-cop27s-agreement-on-climate-compensation-energy-transition-will-be-tough/

 

シンガポール:

https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/pausing-on-highway-to-climate-disaster

 

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/first-step-towards-climate-justice-3176096

 

 

 

関連記事

ランキング

  1.  タイ西部、ミャンマーとの国境の町、メソト。その住宅街の一角に、人権団体「ミャンマー政治囚支援協会」…
  2.  ビールと並び世界で最も古い酒類の一つで、世界中の人々に愛され続けてきたワイン。世界で初めてのワイン…
  3.  タイ西部、ミャンマーとの国境の町、メソト(Mae Sot)。タイ国内でありながら、ミャンマーからの…

ピックアップ記事

  1.  タイ西部、ミャンマーとの国境の町、メソト。その住宅街の一角に、人権団体「ミャンマー政治囚支援協会」…
  2.  ビールと並び世界で最も古い酒類の一つで、世界中の人々に愛され続けてきたワイン。世界で初めてのワイン…
  3.  タイ西部、ミャンマーとの国境の町、メソト(Mae Sot)。タイ国内でありながら、ミャンマーからの…
ページ上部へ戻る