「戦争に勝者はいない」イラン攻撃に南アジア諸国から注がれるまなざし
正当性を真っ向から批判 巻き込まれる市民や自国民を憂慮 

  • 2026/4/9

 アメリカとイスラエルによるイラン攻撃は、その正当性をめぐって国際的な議論を巻き起こしています。トランプ大統領は、NATOをはじめ同盟国に攻撃への協力を求めましたが、賛同する国は出てきていません。4月7日にはアメリカとイランが2週間の停戦に合意したと伝えられていますが、翌8日にはイスラエルが親イラン勢力のヒズボラに最大規模の攻撃を行うなど、依然として戦火は収束の見通しが立ちません。今回のイラン攻撃直後の3月、南アジア諸国の英字紙はあいついでこれを非難とともに伝えました。

空爆を受けたイラン南部の女子小学校で立ち尽くす人々(2026年2月28日撮影)(c) Abbas Zakeri /wikimediacommons

インド紙は「戦略的失策」と批判

 インドの英字紙ヒンドゥーは、3月11日付の社説で、今回の攻撃を「戦略的失策」と位置付けた。

 社説は、イランが殺害されたハメネイ師の後継者として息子のモジタバ師を選出したことについて「戦争を仕掛けられたにもかかわらず、イラン・イスラム共和国はゆるぎないというメッセージを発したことはまぎれもない」と指摘し、「イラン国家は崩壊とはほど遠い状況にある」と伝えた。

 そのうえで社説は、「これはまったく不必要な戦争だった」と断じ、こう問いかける。

 「確かにアメリカとイスラエルは圧倒的な空軍力を有しており、イランへの攻撃を継続できる。しかし、アメリカが “解放” を約束していたイラン国民に対して明確に達成可能な政治的目標を示すこともできないまま爆撃を続けることに、いったい何の意味があるのだろうか」

バングラデシュ紙も「無意味な戦争」の終結を訴え

 同様に、バングラデシュの英字紙デイリースターも、今回の攻撃について「無意味な戦争」だと訴える。同紙は3月11日付の社説で、「この無意味な戦争をただちに終わらせよ」と論じた。

 社説は、ホルムズ海峡が事実上封鎖され、アメリカ軍が湾岸諸国で所有している施設への攻撃が続くことで、戦争はさらに拡大する恐れがあると指摘。「石油・ガスの生産を戦争前の水準に戻すには数週間から数カ月を要する」との専門家の見方を引用し、「今回の石油ショックは、バングラデシュのような国々に甚大な被害をもたらす可能性がある」と述べる。実際、農家は灌漑用の燃料確保に苦労しており、大学は電力節約のために閉鎖を余儀なくされているという。さらに、湾岸諸国に出稼ぎをしていたバングラデシュ人4人が戦争に巻き込まれて命を落とした。湾岸諸国からの送金は減少し、貿易業者はコスト高に頭を抱えている。

 「戦争から真の勝者は生まれない一方、何百万人もの罪のない人々が最も過酷な痛みと果てしない苦しみを負わされている。世界はもはや、この無意味な戦争の代償を負担し続ける余裕はない」

ネパール紙は世界秩序の揺らぎを懸念

 一方、トランプ大統領が進める力による体制変更に疑問を呈したのが、ネパールの英字紙カトマンドゥポストだ。同紙は3月1日付の社説で「力こそが正義ではない」と論じた。

 社説は、アメリカのトランプ政権がシリアやソマリア、イラク、イエメン、ナイジェリアといった国々を爆撃するとともに、ベネズエラでは「指導部の交代を強要した」と指摘し、こう述べる。

 「保守派のハメネイ師は、イラン国民が享受すべき改革や自由に長年にわたり反対し、権利を求めた人々を容赦なく銃撃した。これが、イラン国内の一部の人々が今回のアメリカによる攻撃を歓迎している理由だろう。しかし、だからといって指導者を殺害し、主権国家の体制を変えようとする行為を正当化する言い訳はあり得ない。そうでなければ、不可侵の国家主権に基づくウェストファリア体制自体が疑問視され、世界の秩序が揺らぐ」

「戦争は解決策ではない」とスリランカ紙

 スリランカの英字紙デイリーニュースも3月14日付の社説で「戦争は解決策ではない」と主張した。

 社説は、「戦争は意のままに始められるが、意のままに終わらせることはできない」というイタリアの哲学者マキャヴェッリによる有名な言葉を書き出しに置き、アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃に加え、ロシアのウクライナ侵攻など「終わらせることができていない紛争」を挙げ、この言葉が真実だと指摘。そのうえで、次のように訴えている。

 「現状では、イラン戦争がいつ、どのように終結するかを予測することは依然として極めて困難だ。しかし、一つだけ明らかな事実がある。いかなる戦争にも、勝者も敗者も存在しないということだ。戦争では誰もが敗者となる。すべての交戦当事者はこの厳しい現実を認識し、直ちに交渉の席に戻るべきである」

            *

 「戦争に勝者はいない」。当事国以外のほとんどの国が、そう考えている。南アジア諸国の社説からは、そのことがよく分かる。

 

(原文)

インド: 

https://www.thehindu.com/opinion/editorial/strategic-blunder-on-the-us-the-iran-war/article70727104.ece

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/end-meaningless-war-without-delay-4125456

ネパール:

https://kathmandupost.com/editorial/2026/03/01/might-is-not-right

スリランカ:

https://dailynews.lk/2026/03/14/editorial/966701/war-is-not-the-solution/

 

 

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