ネパール土石流 問われる気候変動の「責任」
復興費用を誰が負担するのか 南アジア3紙が先進国に行動を迫る

  • 2026/9/21

 ネパールと中国の国境地帯で8月26日に発生した大規模な土石流により、9月初め現在、1400人以上が死亡し、5500人以上がいまだ行方不明となっている。土石流は、岩盤や氷河の崩落によって引き起こされたと見られ、その背景の一つとして地球温暖化が指摘されている。

 では、温暖化への責任が小さい国が気候災害によって甚大な被害を受けた時、その復興費用は誰が負担すべきなのか。ネパール紙は国際社会、とりわけ温暖化に大きな責任を負う国々に復興支援を求め、インド紙は「損失と損害」基金の不十分さを指摘。パキスタン紙も、気候変動への責任に応じた公平な負担を訴えた。

 ネパールの惨事を受けて、南アジアの3紙が問いかける「気候変動の責任」について読み解く。

エベレスト山(2020年11月18日撮影) (c) Pierre Markuse from Hamm, Germany / wikimediacommonos

復興支援は「寛大な行為」ではなく責任

 ネパールの英字紙カトマンドゥポストは、9月2日付の社説「Support Nepal’s recovery(ネパールの復興を支援しよう)」で、被災地の復興と気候変動への責任について論じた。

 社説によると、ネパールのバレンドラ・シャー首相は下院で、「復興と生活再建の過程で一人一人に配慮し、すべての人を支えていく」という意向を表明した。

 しかし、そのためには莫大な資金が必要だ。開発資金の多くを国内外からの借り入れに依存しているネパールには、自力ですべてを元に戻す力はなく、国内外のドナーに支援を要請することが不可欠だと、社説は指摘する。

 そのうえで社説は、土石流の原因について、「氷岩雪崩によって引き起こされたものであり、地球温暖化も一因となっている」と指摘。ネパールは、こうした気候変動に起因する災害をもたらした要因の責任を負っていない、と強調する。

 「ネパールの復興と復旧を支援することは、単なる寛大な行為ではない。それは国際社会、とりわけ地球温暖化に過大な責任を負っている国々の責任である」

気候変動の責任をより重く担う先進諸国は、ネパールの人々のこの主張を重く受け止める必要があるだろう。

「損失と損害」基金でも足りない復興費用

 インドの英字メディア、インディア・エクスプレスは、9月5日付の社説「In a warming world, reframe the climate challenge(温暖化する世界で、気候変動への取り組みを再構築せよ)」で、最近発表された国連環境計画(UNEP)の報告書を取り上げ、「地球温暖が進むなか、気候変動への取り組みの再構築が必要だ」と主張した。

 報告書は、地球の気温上昇をパリ協定が掲げる1.5度以内に抑えることはもはや不可能だと指摘する。

 社説は、「欧州やアメリカ、オーストラリアで熱波に見舞われた人々の苦悩や、アジア各地で洪水被害にあっている地域社会の苦しみ、そして今回のネパールの被害を挙げ、「気候変動が今や未踏の領域に入っている」と警告する。

 社説はさらに、「気候変動による被害の費用を誰が負担するのか」という問題にも踏み込む。

 「ネパールの悲劇は、気候変動にほとんど責任のない国に莫大な負担を強いている。2022年には、国連気候変動枠組み条約の席上で、気候変動により避けられない被害を受ける途上国を支援する「損失と損害」基金の創設が決まった。しかし、社説によると、ネパールの復興費用は、控えめに見積もっても、同基金の運用資産の数倍に上るという。

 社説は、これほどの惨事にもかかわらず、同基金が緊急会議の開催などの対応にまだ動いていないことを批判している。

「最も責任ある国」が、最も早く行動を

 「損失・損害基金」の創設に主導的な役割を担ったパキスタンの英字紙ドーンも、9月6日付の社説「Climate test(気候変動が突きつける試練)」で、同じUNEPの報告書を取り上げた。

 社説は、「ネパールと中国を襲った今回の土石流は、気候災害があっという間に人々の生活を壊滅させる現実を示した」と指摘。「温暖化が進めば、災害への対応能力が最も低い地域ほど、複数の気候リスクに同時にさらされるだろう」と述べ、パキスタンを含む新興国は、「制度の対応速度を上回る早さで変化する気候」に備えた開発計画を立てる必要があると訴える。

 そして、UNEPの報告書が、危険な気候の未来を乗り切るためには、資金、公平性、国際協力が不可欠だと指摘していると紹介。そのうえで、「地球温暖化に対して、より大きな責任を負う国々こそ、最も迅速に行動しなければならない」という主張をパキスタンも強く訴えるべきだと論じている。

              *

 ネパール紙が求めるのは、復興支援を「善意」ではなく、気候変動への責任として捉えることである。一方、インド紙は、そのために創設された「損失と損害」基金でさえ、現実の被害規模に追いついていないと指摘すし、パキスタン紙は、温暖化により大きな責任を負う国々に、より迅速な行動を求めている。

 気候変動の影響を最も深刻に受けるのは、必ずしも温暖化を最も進めてきた国々ではない。被害を受けた国に、復興の負担まで背負わせるのか。それとも、温暖化への責任に応じて国際社会がその負担を分かち合うのか。 ネパールの惨事を受けた三紙の社説は、気候変動をめぐる「責任」を、改めて突きつけている。

 

(原文)

ネパール:

https://kathmandupost.com/editorial/2026/09/02/support-nepal-s-recovery

パキスタン:

https://www.dawn.com/news/2027850/climate-test

インド:

https://indianexpress.com/article/opinion/editorials/in-a-warming-world-reframe-the-climate-challenge-10863770/

 

 

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