国境を越える煙害 問われる政府の責任と地域協力
インドネシアの森林火災をめぐり、マレーシア紙とインドネシア紙が警鐘

  • 2026/11/6

 インドネシアで発生した森林火災などによる煙害が、隣国マレーシアにも深刻な影響を及ぼしている。マレーシアでは大気汚染の悪化を受けて学校が休校となるなど、市民生活に支障が出ている。 

 こうした事態を受け、マレーシアの英字紙は国境を越えた対策の強化を求める一方、インドネシアの英字紙は、森林火災を繰り返す背景にある政府の責任を厳しく追及している。

煙霧に覆われたマレーシアの首都クアラルンプール(2026年9月18日撮影)(c) Renek78 / Wikimedia Commons

煙害に苦しむ隣国への共感を

 マレーシア政府は10月8日、深刻化する煙害に対応するため、大気汚染指数が健康を害する水準になった場合は初・中等学校を休校とするよう指示した。これを受けて9日には、クアラルンプールなどの学校が休校となった。煙害の主な原因は、長引く乾季によって悪化しているインドネシアの森林火災や野火だという。

 マレーシアの英字紙ニュー・ストレーツタイムズは10月10日付の社説で、政府による効果的な煙害対策を求めた。

 社説によると、10日時点で国内の約半分の地域にある学校に休校が命じられたという。子どもたちへの影響に加え、保護者の仕事にも支障をきたしている。社説は、「(原因となっている)森林火災の発生地であるインドネシアを、マレーシア国民が非難するのは当然」だと、その心情に理解を示している。

 その一方で、「インドネシアの南スマトラやカリマンタンで、さらに深刻な息苦しい状況に苦しんでいるインドネシアの人々への共感をもって、その怒りをやわらげる必要がある」と指摘。「火災やその原因をつくった人々に対する当局の消極的な対応に、インドネシア国民自身も怒りを募らせているはずだ」と推察する。そして、「われわれが望むのは、インドネシア国民自身が、この煙害に終止符を打つように強く求めることだ」と主張する。

 マレーシアはインドネシアに消火活動への支援を申し出ており、インドネシア側もこれを受け入れている。しかし社説は、支援を迅速に実施できるよう、両国間の手続きを簡素化する必要があると指摘する。

 また、煙害に対する国民の怒りを外交的な対立に発展させるのではなく、両国が協力して問題の根本的な解決に取り組むべきだと訴える。そのうえで、東南アジア諸国連合(ASEAN)全体としても、煙害が地域全体の公衆衛生危機とならないよう、予防の仕組みを強化する必要があると強調している。

 社説は最後に、何十年も繰り返されてきた問題を政府が防げないために、子どもたちが学校を休まなければならないようなことがあってはならない、と訴えている。

森林火災は「ガバナンスの失敗」

 一方、インドネシアでも、煙害をめぐる動きが出ている。英字紙ジャカルタポストは9月29日付の社説で、西カリマンタンでの森林火災の防止をめぐり、政府に組織的な過失があったとして起こされた集団訴訟について論じている。

 社説によれば、この訴訟は西カリマンタンの先住民や市民社会の連合によって提起されたものだ。同地域ではすでに4万ヘクタール近くの森林や泥炭地が消失しており、その規模は地域の対応能力をはるかに超えているという。原告は政府に対し、この危機を「国家災害」に認定し、必要な資金を投入するよう求めている。

 社説は、こうした森林火災について、「自然発火でも避けられない災害でもない」と強調する。

 その原因として、違法な焼畑による開墾に対する取り締まりの甘さ、企業が責任を問われない状況のまん延、そして長年にわたって進められてきた泥炭地の排水を挙げている。湿った泥炭地は本来、火災の広がりを防ぐ役割を果たすが、排水によって乾燥し、燃えやすくなってしまったというのだ。社説はこうした状況を「根本的なガバナンスの失敗」だと厳しく批判している。

 社説は、今回の集団訴訟についても、これまでの取り組みと同様に頓挫する可能性があると悲観的だ。しかし同時に、この集団訴訟は、従来の災害管理の限界を示す「緊急の警鐘」だと位置付ける。そのうえで、真の変化は火災が発生してから消火活動を行うだけでは生まれず、ガバナンスの崩壊を解消することが不可欠だと強く訴えている。

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 マレーシア紙は、煙害に苦しむ人々への共感を呼びかけながら、ASEAN全体での対策強化を求めた。一方、インドネシア紙は、森林火災を繰り返す背景にある政府の管理体制や企業への監督の甘さを問題視している。

 国境を越えて被害が広がる煙害を防ぐには、地域の協力だけでなく、火災の発生を許してきた国内の構造的な問題にも向き合う必要がある。二紙の社説は、その両面から対策を進める重要性を浮き彫りにしている。

 

(原文)

マレーシア:

https://www.nst.com.my/opinion/leaders/2026/10/1552020/nst-leader-haze-crisis-needs-more-promises

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2026/09/29/justice-in-the-choking-haze

 

 

 

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