ネット社会で若者をどう守る 問われる規制と「発信する責任」
ネパール紙は未成年のSNS利用制限を提言、マレーシア紙はインフルエンサーの責任について問題提起

  • 2026/8/24

 未成年のソーシャルメディア(SNS)の利用を制限する動きが、世界各地で始まっている。オーストラリアは2025年12月に、16歳未満のSNS使用を禁止する法律が施行された。アメリカでも州ごとに保護者の同意を義務付けるなどの規制が導入され、イギリスでは運営企業に未成年のアクセスを防ぐ法律が成立された。マレーシア、フランス、インドネシアでも同様の動きが見られる。

 背景にあるのは、SNSが子どもの心身に及ぼす影響や、サイバー犯罪への懸念だ。一方、利用を一律に制限すれば、子どもの情報へのアクセスやプライバシーを侵害する可能性もある。

 ネット社会のなかで、若者をどう守ればいいのか。ネパール紙は未成年者を守るための法的な枠組みを求め、マレーシア紙はSNSで大きな影響力を持つ発信者の責任を問いかけている。

列車内でスマートフォンに見入る乗客たち。ネット社会のなかで若者をどう守るのか、各国が対策を迫られている (c) John Lockwood / Unsplash

SNSを禁止すれば、子どもを守れるのか

 ネパールの英字紙カトマンドゥポストは7月24日付の社説「Should Nepal restrict minors’ access to social media?(ネパールは未成年者のSNS利用を制限すべきか?)」で、世界各国で進むSNS規制を取り上げ、ネパールでも子どもを守るための法的な枠組みが必要だと論じた。

 社説は、規制が広がる背景として、SNSに起因するメンタルヘルスの問題や、利用者を長時間つなぎとめる中毒性の高いプラットフォーム設計、サイバー犯罪の増加を挙げる。

 さまざまな研究から、過度なスクリーンタイムは、増加傾向にある10代のうつや不安障害などに関連し、睡眠にも悪影響を及ぼすことが指摘されているという。また、「無制限にSNSにアクセスできる環境は、未成年者をグルーミングや恐喝などの危険にもさらす」と警告する。

 実際、ネパールでは未成年者を標的にしたサイバー犯罪が、この3年で4倍に増加しているという。また、少女の4割近くがオンライン上で望まないコンテンツを受け取っている、という。

 一方で社説は、規制に懸念を示す声も紹介している。一律の禁止措置は、情報へのアクセス権や子どもの権利を侵害する可能性がある。また、利用者の年齢を確認するために個人情報の提出を求めれば、別のプライバシー上のリスクが生じる恐れもある、と社説は指摘する。

 インドやパキスタン、バングラデシュなど、周辺国でも未成年のSNS利用をめぐる議論が活発になるなか、社説は「ネパールは依然として遅れをとっている」と指摘。「SNSのプラットフォーム上で子どもの安全を確保する法的な枠組みを構築すべき時だ」と訴えている。

責任が伴う「影響力」

 一方、マレーシアの英字紙、ニューストレイツタイムズは、SNSで情報を発信し、拡散する側の責任を問題視する。

 マレーシアでは7月、公立中学校で、15歳の女子生徒が同級生を刃物で複数回刺して負傷させるという事件が起き、その後、事件に関するコメントがオンライン上で過熱した。同紙は7月13日付の社説でこの事件を取り上げ、SNSとの関係について論じた。

 同紙は今回の事件が、現在の「情報エコシステム」が抱える深刻な問題、すなわち検証されていない主張がインフルエンサーやネット上の著名人によって急速に拡散される現象を浮き彫りにした、と報じた。事件後、ネット上には、被害者が加害者をいじめていた、という憶測が瞬く間に広がったが、警察はその時点でいじめがあったとの裏付けを得ていなかったという。

 社説は、「オンライン上で多くのフォロワーを持つ個人は、進行中の捜査についてコメントする際、より大きな責任を負うべきだろうか」と問いかけ、「答えは、断固としてイエスだ」と言い切る。根拠のない情報が拡散すれば、捜査を妨げる可能性があるだけでなく、名指しされた本人やその家族に現実の危害が及ぶ恐れもあるからだ。

 そして社説は、「説明責任を伴わない影響力は、現実世界に害をもたらす」と警告し、「ジャーナリストに対して、事実を公表する前に検証することが求められるのであれば、オンライン上で多くの人々に情報を届けるインフルエンサーにも同じ原則が適用されるべきだ」と訴える。

              *

 SNSは、若者が情報を得たり、人とつながったり、自ら発信したりする重要な場になっている。だからこそ、「禁止するか、自由にするか」という二者択一だけでは、若者を守ることは難しい。

 ネパール紙が求めるのは、子どもを危険から守るための制度づくり。一方、マレーシア紙が問うのは、大きな影響力を持つ発信者の責任だ。二つの社説から浮かび上がるのは、ネット社会で若者を守るには、利用する側だけでなく、プラットフォームや発信者、そして社会全体がそれぞれの責任を負う必要があるということだ。

 

(原文)           

ネパール:

https://kathmandupost.com/editorial/2026/07/24/should-nepal-restrict-minors-access-to-social-media

マレーシア:

https://www.nst.com.my/opinion/leaders/2026/07/1487292/nst-leader-influencers-and-accountability

 

 

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