インドネシアが10年ぶりに政権交代 プラボウォ政権に対する期待と課題
ジョコ前大統領から引き継いだ「遺産」 経済発展と民主主義の行方
- 2024/11/19
インドネシアで10月20日、プラボウォ氏(73)が大統領に就任しました。同国における大統領の交代は10年ぶり。ジョコ前大統領の路線を踏襲しつつ、国際社会、特にグローバルサウスのリーダー的立場をどのように構築していくかが注目されています。インドネシアのジャカルタポスト紙に掲載された複数の社説から、プラボウォ政権への期待と課題を読み解きました。
ジョコ前大統領の経済政策を超えられるか
10月21日、就任翌日に掲載された社説のタイトルは、「レガシーと野望のバランス」。
社説は新大統領について、「プラボウォ・スビアント氏は、3回の大統領選挙を経て、10年以上をかけてついに権力の頂点に立った。かつては独裁政権を率いたスハルト元大統領の熱狂的な代理人という烙印を押されたが、長年にわたり自己改革を続け、多くの忠実な支持者をもつベテラン政治家へと変貌を遂げた」と述べ、歓迎の意を示す。
社説はしかし、「プラボウォ氏は今後、多くの困難に直面するだろう」との見方も示す。社説が挙げたのは、前政権から引き継がれた「遺産」との格闘だ。この「遺産」とは、ジョコ前大統領の政策、なかでも経済政策を指す。ジョコ前大統領はインフラ開発を通じて経済を活性化することに成功したが、プラボウォ氏はさらに野心的な「8%の経済成長率」を掲げているのだ。これを達成するためには、「国民の不評を買うような決定を迫られる可能性がある」と社説は指摘する。
また、プラボウォ氏が軍出身であることから、民主主義の規範が軽んじられるのではないかと懸念する人もいるという。社説は、「インドネシアには大きな可能性があるが、それを実現するには、大胆でありながらも真の民主主義を原則とするリーダーシップが必要だ」と述べ、民主主義的な国家運営の重要性を強調している。
外交トップに「新参者」が就任
注目される外交政策については、10月25日付で「インドネシアの外交拡大」という社説が掲載された。
社説は冒頭から「政治家スギオノ氏が外務大臣に就任したことは、多くの外交官や外務省職員に衝撃を与えた」とつづる。なぜなら外務省は2001年8月以来、13年間にわたり、政治家ではなく3人のキャリア外交官によって率いられてきたからだ。
プラボウォ大統領がスギオノ氏を任命した理由について、社説は「外務省を刷新するために、十分な経験を持たない新参者が必要だったのだ」と指摘した。プラボウォ氏の指導の下で外務省改革と官僚改革を進めることがスギオノ氏の重要な任務の一つだ、という。45歳のスギオノ氏は、プラボウォ氏の「愛弟子」と認識されており、大統領が「トップダウン」で外交政策を展開するには最適な人物だ、と社説は見ている。
ジョコ前大統領が残した負の遺産
新政権に対する期待感の一方、去り行くジョコ前大統領には厳しい評価が下された。10月19日付の社説は「時代の終わり」。新政権への移行を前に、前政権を振り返る内容だ。
社説は、ジョコ氏が大統領に就任した当時の「熱狂」を、タイム誌の表現を借りて「この国の新たな希望」だったと述べる。ジョコ氏は庶民派として、汚職撲滅、官僚改革、人権保護を公約に掲げたからだ。
しかし、「その多くは実現することなく消え去った」と社説は述べ、汚職対策の失速、表現の自由の制限など、ジョコ政権下で「多数派の専制政治」がもたらした負の遺産を列挙する。そして、それらは「将来の指導者が追随したくなってしまうような危険な前例」だと述べる。
プラボウォ政権で副大統領を務めるのは、ジョコ前大統領の長男、ギブラン氏(37)だ。社説は、ジョコ氏がこうしたやり方で今後も政治に影響力を維持し続けるだろう、と警戒を示している。
(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2024/10/19/the-end-of-an-era.html
https://www.thejakartapost.com/opinion/2024/10/21/balancing-legacy-and-ambition.html
https://www.thejakartapost.com/opinion/2024/10/25/indonesias-diplomacy-expansion.html