CDM参加のミャンマー外交官が守った正義
28年のキャリアを投げ打って表明した「真実の立場」

  • 2022/1/6

「これからは市民のために」

 28年にわたり外交官としてのキャリアを歩んできたアウンソーモー氏に、積み重ねてきたキャリアを捨てる決意をさせたものは何だったのか。 インタビュー前に幾度も考えた疑問を本人にぶつけると、アウンソーモー氏はやや微笑みながら、「ミャンマーでは、“あの日”以来、楽しい日は一日たりともない。命を懸けて戦い続ける若者たちへの共感こそが、28年にわたって大切にしてきた仕事を捨て去る原動力になった」と語った。 
 その声には悲しみが込もっていたが、「これまで私は政府のために役割を果たしてきた。これからは市民のために働くことが私の務めだ」と続けた時の表情は晴れやかで、誇らし気だった。 

CDMに参加するように求めている一般市民たち(2021年2月、筆者撮影)

 そんな同氏に、NUGと軍の間で2021年9月から「自衛のための戦争」が行われていることについてどう思うかと尋ねると、強い口調で次のような答えが返ってきた。 
 「若者たちは、自分たちの未来を取り戻そうとしている。もし、軍が若者の人生を輝かせ、市民の命や住宅を守ることができるというのなら、その証拠を見せてほしい」「 もしも軍が市民のために働くことができるのならば、自衛のための戦争こそが過ちということになるが、はたして本当にそうだろうか」 

ヤンゴンで軍への抵抗デモを行った教師ら(2021年2月、ヤンゴンで筆者撮影)

 28年にわたり外交官として歩み続け、一等書記官になるまでキャリアを重ねてきた同氏にとって、外交官というキャリアは自分の人生に等しいと言っても過言ではない。 それを投げ打ってでもCDMを決意した背景には、「公務員が真理に寄り添い、真実を口にし、不正を拒否できれば、正義は確かに存続し続ける」という信念がある。 これまで本音を隠し、気持ちを押し殺して皆に笑顔で話しかけながら自身の役割をまっとうし続けてきたアウンソーモー氏は、筆者のインタビューの間も、常に気持ちを懸命に押し殺そうとしている様子だった。 しかし、その目には言葉に表せないほどの深い哀しみが溢れていた。 

 

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