自分たちの言葉は教会で学んだ
民族の誇り支えるキリスト教会の「寺子屋」
- 2019/10/28
ミッチーナのユザナ地区のカトリック教会の集会所では、春休みの間のほぼ2カ月間の月曜から金曜の午前中、カチン語のクラスが開かれる。クラスは4つあり、小学校1年から3年までで、3年生はレベル別に2つに分かれている。受講料は2カ月のコースで5,000チャットだ。1クラスは数人から十数人で、計50人ほどが学んでいる。教授法のトレーニングを受けたカチン族の教師が、薄謝によるボランティアで教えている。長期休みの間に開講するため、「カチン族以外にも、ビルマ族の子どももカチン語を学ぶために参加する例もある」という。
3年生の上級クラスでは、「牛とカエル」というカチンの昔話をテキストとして用いていた。教師の女性が、難しい単語を書き出して説明しする。生徒たちは声を出して文章を読み上げる。教師が質問をすると、生徒は思い思いに答える。教室ではコミュニケーションを重視しているようだった。
低学年のクラスではカトリック教会が編纂したカチン語の教科書を使用していた。イラストを多用し、体の部位の名前や、民族の伝統、キリスト教についてまでの内容をちりばめている。アルファベットの読み方なども解説してある。このほか、最大の信者数を抱えるバプテスト教会が作成したテキストのほか、ミャンマー政府がまとめたものもある。こうしたテキストは、中央政府の支配の及ばないカチン系武装勢力の支配地域では、正規の学校でも利用されているという。
こうした場を利用して多くのカチン人は母語を学んでいくのだが、ほとんどの教会では小学校レベルの授業しか行われておらず、高度な文章の読み書きなどは学ぶ機会が少ないのが現状だという。