「春の革命」ビールとTシャツがSNSで話題
熊本発ミャンマーサポートプロジェクトの反響を読む

  • 2021/7/25

 「忘れていない」メッセージ  

 クーデターの発生から8月1日で半年となるミャンマー。当初のような大規模なデモは武力によってかなり抑え込まれているものの、散発的な抗議行動は今なお各地で行われており、軍に仕えない意志を示すCDMも続いている。しかし、軍はCDMに参加している公務員の多くを解雇したほか、企業の倒産や事業の縮小・一時停止も相次ぎ、収入を失った人々の生活は困窮している。前出のメイさんやウィンさんの言葉からは、時間の経過とともにストレスが募る中、日本でチャリティービールとチャリティーTシャツが発売されたことに多くのミャンマー人たちが励まされたことがうかがえる。
 一方、日本人には、ビールやTシャツという敷居の低さが、夏が始まるタイミングと相まって受け入れられたようだ。従来の顧客層やミャンマーに縁のある関係者たち、ニュースなどでミャンマーの現状を見聞きして支援方法を探していた人たちなど、全国各地から注文が寄せられた。まとめ買いをして知り合いに贈る人もいた。

酸素ボンベを手に入れ、家路に急ぐヤンゴン市民 © The Irrawaddy

 今回、特に大きな反響を呼んだビールは、900本で製造を打ち切る予定だという。チャリティー事業を継続する難しさはしばしば指摘されるが、今回のビールも、製造ラインの確保や発送作業の手間を鑑みると、売り上げの全額を寄附するモデルは、残念ながら長期的には限界があるためだ。
 とはいえ、故郷の人々向けに生まれた商品が、当初の想定を大きく上回り、日本とミャンマー両国の人々の間で「バズった」意味は大きい。今回の支援プロジェクトによって、事態の長期化と膠着化に伴ってミャンマーに対する世界の関心が薄れていくことを恐れる人々の多さと、彼らの思いの強さが改めて浮き彫りになった。
 現地では、軍の弾圧やCDMなどの影響によって感染状況が把握されないまま危惧されていた新型コロナウイルスも、ここに来て感染爆発が起きており、状況は一層ひっ迫している。それでも、人々は軍系の病院による検査やワクチン接種を拒否し続けるほど、軍に対する不信感と拒否感は強い。7月23日には、多くの人々が政治犯として収容されているヤンゴン市内のインセイン刑務所から、突如、反クーデターの大合唱が沸き起こり、周囲の人々が外から撮影した動画が、歌声とともにSNSであっという間に拡散された。命懸けの行動に市民らも応え、同日夜にはしばらく抑え込まれていた抗議の鍋叩きの音が街に響いたという。
 2月1日以来、懸命に自由と正義を求め続けてきたミャンマーの人々が、今、さらなる苦難に見舞われている中、現状を知らせ、関心を高め、「忘れていない」というメッセージとエールを届けるためにできることは少なくないはずだ。熊本発のプロジェクトの反響に込められた悲痛な声をしっかり受け止めたい。

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