ミャンマー洪水で88万人が被災 国軍の対応遅れに高まる批判
ずさんな被災者対応で「罪を重ねる」軍事政権
- 2024/10/14
ミャンマーでは9月上旬から、台風11号に伴う大雨により洪水や土砂崩れが多発している。国連機関の報告によると、9月20日時点で300人以上が死亡し、被災者の推計は全国で88万人以上に上るという。ミャンマーの国営メディアによると、洪水による被害は首都ネピドーをはじめ、東部、中部、南部など、国土の広範囲に及ぶ。
現地では緊急支援が必要な状態であるにも関わらず、被災地への道路や橋は寸断されているうえ、通信回線も遮断されているようだ。また、3年半前のクーデターで実権を握ったミャンマー軍は、民主派勢力や少数民族武装組織と各地で戦闘を続けているため、災害対策には手が回っていないと批判の声が高まっている。
国軍が被害を増大させた「ナルギス」の記憶
タイを拠点にミャンマー国内の民主派を支援している英字メディアのイラワジは、9月17日付の社説で、「ミャンマー国軍は、被災者への対応を怠り、罪を重ねている」として、国軍の対応を厳しく批判した。
ミャンマーは2008年、同国史上最悪の自然災害となったサイクロン「ナルギス」を経験している。イラワジ・デルタ地域を襲ったこの大型サイクロンによって、実に13万人以上が死亡した。社説は、当時の軍事政権の対応を振り返り、国民への情報拡散が遅れたことや、被災直後に国連や救援団体の受け入れを拒否したことなどを挙げ、「軍事政権が被害を増大させた」と主張する。
また社説は、「今回の台風によって、ナルギス以来、最も壊滅的な被害がもたらされた」と述べ、「国連が発表する被災者数に加え、一部の地域では土砂崩れによって村全体が消滅しているため、犠牲者の人数はさらに増える可能性がある」と指摘する。また、「ナルギスの被害はほとんどがエヤワディー地域に限られていたのに対し、今回は広い地域で被害が発生しているため、被害規模はさらに悪化する可能性がある」「北部から洪水が押し寄せているため、南部では河川の水位が上昇し、人々は鉄砲水や土砂崩れなどのリスクに直面している」として、多くの国民が危機に瀕している現状を訴えた。
国営メディアで救援活動をアピール
そのうえで社説は、今回の被災に対する軍事政権の動きについて「言語道断だ」と強く非難する。社説によれば、SNS上では鉄砲水や洪水の被害に遭い、助けを求める人々の声が直後から続々と拡散されていたが、その間、国軍の動きはまったく見られなかったという。
その一方で、犠牲者数が増えると、国軍幹部たちは国営メディア向けに被害状況の視察を行い、救援活動を行っているとアピールした。軍事政府は「首都ネピドーの、膝下ほどしかない水の中を歩く兵士たち」の写真や、「比較的、被害の軽そうな被災者を救う兵士たち」などの写真を国営メディアに掲載させた一方、甚大な被害について報じる独立系の報道機関を「国民を不安に陥れる噂を流している」と非難したと社説は指摘する。
社説は、「ミン・アウン・フライン政権はクーデター以来、3年以上にわたり国民の生活を悲惨なものにしてきた。そこにさらに自然災害による苦難が加わった。その意味で、この苦難も主に国軍の怠慢に起因していると言える。悲しいことに、国軍がミャンマーを支配する限り国民の苦難に終わりは見えない」と述べた。
(原文)