【ミャンマー総選挙2020】収監された映画監督はなぜスーチー氏を支持するのか
ミャンマーの人権派映画監督ミンティンココジー氏

  • 2020/9/3

ハードル高い憲法改正

 ミャンマーでは11月8日に総選挙が予定されている。与党NLDが初めて自分たちの施政について審判を受けることになる。ミンティンココジー氏に今回の選挙の争点について尋ねると、「自分たち民主活動家が求めてきたものは、統治制度の改革だ」と答えた。自分たちはずっと、軍の支配から民主的な選挙で選ばれる世の中を求め、そして政権交代を果たした現在は、2008年憲法の改正が課題として残っているという意味だ。

ミンティンココジー氏は憲法改正を強く訴える(筆者撮影)

 民主化の観点からすると、2008年憲法に問題があることは間違いない。NLDの最大の政策目標は憲法改正ともいえる。しかし一方で、改正には国会の4分の3以上の賛成が必要だ。その結果として25%を占める国軍推薦議員の一部が賛成しなくては改正ができない仕組みになっており、実現は非常に難しい。2020年3月国会でNLDなどが提出した憲法改正案の採決が行われたが、事前の予想通り、国軍選出議員や国軍系の連邦団結発展党(USDP)によってほとんどが否決。わずかにミャンマー語の言い回しの修正のみが認められた。

 こうした高いハードルを理解したうえでも、NLDやその支持者は憲法改正を目標として掲げている。ただ、仮に11月の総選挙でNLDが勝ち、また5年政権を任されたとしたら、もう「憲法が悪いから改革が進まなかった」とは言えなくなる。憲法の改正を実現するか、憲法の枠内で改革を進めるか、いずれにしても改革を求める有権者の声に応えなくてはなならないだろう。

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