イラン戦争 世界が注視する「合意」を南アジアはどう報じたか
期待を高める国際社会 不確定要素を危惧する声は消えず

  • 2026/6/20

 アメリカとイランは6月14日、戦闘終結に向けて合意したことを発表。17日には署名が行われた。しかし、双方の争点には依然として隔たりが大きく、イスラエルの動きを含め、依然として不確定な要素は多い(*編集部注:アメリカとイランの間で19日に予定されていた直接協議も延期になった)。南アジア諸国は今回の「合意」をどう受け止めたのか、合意発表直後の報道ぶりから考える。

フランスのヴェルサイユ宮殿で、イランとの戦争終結に向けた覚書に署名するトランプ大統領。フランスのマクロン大統領夫妻が同席した(2026年6月17日撮影)© The White House / wikimediacommons

パキスタン紙「平和のために今こそ合意を」

 アメリカとイランの仲介をしたパキスタンの英字紙ドーンは、今回の和平について6月15日付の社説で慎重な見方を示している。

 「週末を通じて、アメリカとイランの間で和平に向けた暫定的な枠組み合意が間近に迫っているとの期待が高まっていた。しかし、昨日(6月14日)明らかになったように、イスラエルはまたしても和平の妨害役となり、ヒズボラの拠点であるベイルート郊外を爆撃した」

 社説は、イスラエルの行動をこう指摘し、楽観視を留保する。イランは、終結合意の条件として、ベイルートへの攻撃停止を含めているからだ。

 社説はこれに対し、交渉の仲介をするパキスタンや、カタールなど地域諸国は、「合意を成立させ、交渉が決裂するのを防ぐために外交努力を強めている」と指摘。アメリカに対して、「トランプ大統領は今こそ断固とした態度を示し、テルアビブの『友人』たちに合意を妨害するなとはっきり伝えるべきだ」と求める。 

 「今回の戦争と、それに伴うホルムズ海峡の封鎖は、世界経済を揺るがした。また、この無意味な侵略によって、多くの罪なき人々の血が流された。だからこそ、アメリカとイランはこの機会を逃さず、合意に署名すべきである。次にこのような和平のチャンスが訪れるのはいつになるか分からないからだ」

エネルギー経済の再構築を訴えるバングラデシュ紙

 戦闘終結については不安定要素があるものの。今回の「合意」によって期待されるホルムズ海峡の再開は各国の経済、エネルギー事情に大きな安心をもたらす。バングラデシュの英字紙デイリースターは、6月15日付の社説で「ホルムズ海峡の再開はすべての国の利益になる」と述べた。

 社説は、ホルムズ海峡の再開は、湾岸地域をはるかに超えて影響が及び、「その目立たない恩恵を受ける国の一つにバングラデシュがある」という。

 社説は、今回の合意を「紛争が始まってからこれまでで最も重要な外交的進展」と評価した。バングラデシュの電力供給は、輸入液化天然ガス(LNG)に多くを依存している。その大半はホルムズ海峡を経由して運ばれるが、戦争開始以来、海峡は事実上、閉鎖されていたため、国内では輸入費の高騰から外貨準備がひっ迫し、発電所の稼働停止なども発生していた。

 また、社説は「この機会にバングラデシュ政府は、LNG調達契約の改善を進めるべきだ」と指摘する。「当面の危機が緩和されたとしても、この100日間から得られた教訓を忘れてはならない」として、サプライチェーンの多様化や、国内ガス探査・開発の加速、LNG依存を減らすための再生可能エネルギー政策の立案などが急務だとしている。

インド紙「石油が市場に流れ込んでも価格は回帰しない」

 インド紙タイムズ・オブ・インディアは、今回の合意実現について6月15日付の社説「原油相場は落ち着いている? そうとも限らない」で、冷静に論じている。

 社説はまず、今回の和平合意が実現するかどうかは、「トランプ大統領がネタニヤフ首相をどこまで抑え込めるかにかかっている」と指摘する。

 しかし、不確定要素はそれだけではない。社説は、イランの核濃縮問題が合意に含まれていないことを挙げ、「恒久的な平和は依然として可能性の域を出ない」と指摘する。

 その一方で、社説は市場について、「最悪な危機は過ぎ去ったと言える十分な理由がある」として、価格の上昇や原油価格の値下がりを挙げる。また、トランプ大統領が「世界の船よ、エンジンを始動せよ。石油を流通させよう」と呼びかけたとしても、「足止めされている船舶が即座にすぐに出航できるわけではない」「海峡には機雷が敷設されている」と述べる。

 さらに、海峡が開放され、世界市場に大量の石油・ガスが「あふれだす」としても、輸入国は今回の危機で枯渇した備蓄を急いで補充しようとするため、当面は価格の下落は見込めない、と指摘。「イランがホルムズ海峡を封鎖する力があることを目の当たりにした保険会社も、今後、保険料に地政学的なリスクを上乗せする可能性がある」と述べる。総じて、価格が急速に戦争前の水準に回帰することはなく、当面は高止まりするだろう、という見立てだ。

           *

 いずれの社説の見方も、すべては安定した和平が基本だが、そこにはイスラエルの存在とイランの核問題という不透明な要素が依然として存在する。合意の行方を世界が注目している。

 

(原文)

パキスタン:

https://www.dawn.com/news/2007954/brief-opening

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/hormuz-reopening-everyones-interest-4199411

インド:

https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-edit-page/oil-quiet-not-quite/

 

 

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