米国で第二次トランプ政権が始動 南アジアはどう見ているか
次々と打ち出される新政策の報道ぶりに見る期待と懸念

  • 2025/2/17

 アメリカで2025年1月20日、ドナルド・トランプ氏が大統領に就任した。就任前から国内外で存在感を示し、就任直後から30を超える大統領令に署名するなど、精力的な動きを見せている。「自国最優先」の政策の数々は、アメリカ国内にとどまらず、世界に大きな影響を与える。南アジア諸国の社説からその視点を紹介する。

2017年に中国を訪問し、習近平国家主席と会談したトランプ米大統領(c) wikimediacommons

インドは米国との共存あるいは相互依存に自信

 インドの英字メディア、タイムズオブインディアは、2025年1月20日付の社説で「トランプ時代」にインドはどのような戦略を持つべきかを論じている。
 社説はまず、「トランプ氏に対するインドの最善の戦略は、インド経済をより堅固なものにすることだ。遅れをとってはならない」と主張する。さらに、トランプ氏の貿易政策や移民政策については、「注意を払う必要がある」としながらも、「インドには選択肢がある」と自信をのぞかせる。
 そのうえで、「中国との競争で優位に立つことが前提だ」と指摘。「トランプ氏は当面の訪問先として、中国とインドを検討している」と述べ、トランプ大統領率いるアメリカが今後、インドと中国という二つの大きな選択肢を持とうとするのではないか、との見方を示し、こう述べる。「米中が駆け引きをするなかで、インドの優先順位は下がるのではないか、という不安を抱き、神経質になっている人々がいるのは確かだが、冷静で理性的な人々は、状況を読み、相手をよく見て、より強いカードを切るべきだ」
 さらに社説は、インドがアメリカと共存、あるいは相互依存できる分野を挙げている。たとえば、自動車・製薬・バイオテクノロジー・建設などの分野でアメリカの多国籍企業の海外業務移転の受け皿となる可能性や、米国製品にとってのインド市場の価値などだ。
 「後手に回っていては、トランプ的な大胆さに対抗することはできない。中国が日本を追い越したのは、たかだか2010年のことだった。今年はインドが達成するかもしれない。経済的な強さは、地政学的な強さや、われわれの手元にどのような取引があるかにも大きく影響する」「中国に対抗するというわれわれの目標に対し、インドの成果はまだ低調で、パフォーマンスが不足している。今後、製造業とサービス業の両方で多くのことが改革されて急成長を遂げることができれば、トランプ氏率いる米国とインドとなるだろう」と社説は述べている。なるだろう」と社説は述べている。このほかにもタイムズオブインディア紙は、トランプ氏の新政策について社説で論じている。まず、移民政策については、「違法移民を減らすための積極的な行動は、合法的な経路を強化するために不可欠だ」として、歓迎の意を示している。
 他方、アメリカで出生した赤ちゃんに米国籍を与える出生地主義の廃止については、「トランプ氏が出産ツーリズムの存在を指摘するのは正しい」としたうえで、「合法移民の子どもたちを不法滞在者に変えると脅すことは誤っている」と指摘する。社説は、アメリカの経済誌フォーチュンが世界の大企業の収入(売上)をもとに毎年選出する500社の2024年版ランキングにおいて、移民またはその子どもたちによって設立された「ニューアメリカン企業」が45%を占めていることに触れ、「彼らを追放すればアメリカの繁栄に深刻な打撃を与えるだろう」と述べている。

「超国家主義的な指導者の再登場」を警戒するバングラデシュ

 バングラデシュの英字紙デイリースターも、2025年1月25日付の社説で「トランプ氏の復帰にあたり、政府や企業は新たな現実を踏まえた積極的な対策が必要」だと主張している。
 社説は、トランプ氏が二度目の米大統領に就任したことで、「人権擁護や平和と安定の促進というアメリカの国際的な責務に対する考え方が変化している」と指摘。ウクライナ戦争やイスラエルとハマスの対立などへの影響には「期待」を示したうえで、「パレスチナ人にとって不公平な合意に終わらないことを願う」と懸念も示した。
 また社説は、「関税戦争やパリ協定などからの離脱は非常に懸念すべきことだ」としたうえで、ムハマド・ユヌス最高顧問が率いるバングラデシュの暫定政権に対してアメリカが支援を改めて表明したことについては「支援の約束は希望の光となった」と述べている。
 さらに社説は、トランプ大統領の就任式にテクノロジー大手のリーダーたちが多数出席したことについて、「深刻に受け止めるべきだ」と指摘。「超国家主義的な指導者の再登場は、特に核とテクノロジーが世界を動かしている現代において、世界に深刻な影響を及ぼす可能性がある。大国が大局的な見地で、協調的な世界を築くことが優先されるべきだ」としている。

(原文)
インド:
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/grow-find-leverage/

https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/dunki-danger/

https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/born-in-usa/

 

バングラデシュ:
https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/trumps-return-raises-cautious-optimism-3805351

 

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