報道の自由を守れ!東南アジア、ジャーナリストたちの現状
自国のジャーナリズムの苦境を、各国紙はどう報じたか
- 2025/6/26
国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)は5月2日、2025年の「報道の自由度ランキング」を発表した。調査対象の180カ国・地域のうち、1位はノルウェー、2位はエストニアだった。また、日本は66位と、前年の70位よりも少し順位を上げた。とはいえ、世界的な傾向として、メディアは経済的に「前例のない深刻な低水準」にあり、報道の自由が揺らいでいると指摘されている。
メディア関係者の殺害続くフィリピン
フィリピンの英字紙でフィリピン・デイリー・インクワイアラーは、5月6日付の社説で「ジャーナリストの殺害がいまだ多い地域」と題した記事を掲載した。
社説はまず、フィリピンのジャーナリズムをめぐる状況として、「2024年は、この20年間で初めてフィリピンのメディア関係者が職務中に殺害されなかった年だった」と振り返る。前述の国境なき記者団による報道の自由度ランキングでも、フィリンピンは2025年には116位となり、前年の132位から大幅に順位を上げた。
「つまり、状況は改善傾向にあった。現在のマルコス政権は、父親が残した残虐な遺産――すなわち、民主主義の崩壊や、メディアに対する拷問と殺害――とは異なる道を切り開くと予想されていた」と社説は述懐する。
しかし、この楽観的な見方は4月29日にむなしく否定された。社説は、フィリピン出版協会名誉会長でベテランジャーナリストのファン・ジョニー・デイアン氏(89)がこの日、故郷のアクラン州で殺害されたと伝えている。政府はすぐにこの殺害を非難する声明を出し、迅速かつ徹底的な調査を約束した。だが、社説はこの非難声明について、「立派なメッセージだが、あまりにも聞き飽きたもの」と断じる。フィリピンではマルコス大統領が2022年に就任してからメディア関係者の殺害事件が5件起きているが、「ほぼすべてのケースで正義が実現していない」のがその理由だ。
「2024年にジャーナリストの殺害が1件もなかったということは、確かに歓迎すべきマイルストーンであり、記者の殺害が不可避ではないという励みになる。しかし、この進歩は、継続的で一貫したものでなければならない」と、社説は訴えている。
テック企業と戦うインドネシアの伝統的メディア
インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポストは、5月8日付で「報道の自由を守れ」と題した社説を掲載した。インドネシアは報道の自由度ランキングで127位と、フィリピンを下回っている。
社説は、主に経済的な側面から、メディアの独立性とジャーナリストという職業の持続可能性について、「メディア業界で働くジャーナリストにとって最も基本的な問題は、所属するメディア企業が、彼らに給与を支払えるか否かだ」と指摘する。
社説がこう述べる背景には、購読料や広告収入の激減もあるが、それに加え、プラボウォ大統領が広報予算を削減したことが影響しているという。インドネシアでは、主流メディアが政府の広報予算に依存した経営をしているため、「広報予算の削減により、多くのメディア企業が、ジャーナリストの解雇という苦渋の決断を迫られている」と社説は言う。
社説は、「従来の“伝統的な”メディア企業が、SNSやストリーミングサービスなどを提供するテクノロジープラットフォームと同じ土俵にいると考えるのは誤りだ。後者が広告収入のほぼ8割を吸い上げている理由は、前者にはない高度なテクノロジーを有しているからにほかならない。しかしこれは、伝統的メディアには手が届かない領域だ」と指摘する。
これを踏まえて社説は、「政府は、ジャーナリズムを本業とする伝統的メディア企業に積極的にテコ入れして技術的優位性を獲得し、競争の土台を平等にすることが必要ではないか」と投げかけている。
(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2025/05/08/protect-the-press.html
フィリピン:
https://opinion.inquirer.net/182984/still-journalists-murder-capital