世界に広がる「Z世代フィーバー」
既存の権威に抗議する若者たちをアジア紙はどう報じているか
- 2025/12/1
ネパール、インドネシア、フィリピンーー。この数カ月間、「Z世代」と呼ばれる若い人々が主導する政治改革を求める抗議活動が、世界各地に広がっている。アジアだけではない。モロッコやマダガスカル、ケニアなどアフリカ諸国、そして南米諸国でも、若者たちが既存の権威への抗議の声を上げている。
ネパールでは9月、政府がSNSを禁止したことをきっかけに若者たちの不満が爆発。たった2日で当時の政権を崩壊させた。インドネシアでもプラボウォ政権への不信感から抗議行動が起きており、フィリピンでは公共事業をめぐる汚職への抗議行動が続いている。アフリカ大陸に目を転じると、9月にはモロッコでサッカーのワールドカップへの巨額投資に憤った若者たちの大規模な抗議行動があった。同じ9月、マダガスカルでは水不足や電力不足をきっかけに政治改革を求める大規模な行動が起き、政権崩壊へとつながった。一方、南米のペルーでは10月、抗議行動によってボルアルテ大統領が罷免され、新大統領が就任したものの、不安定な状態が続いている。
若き理想主義の持続性を懸念するフィリピン紙
こうした動きについて、フィリピン国内で大きな発信力を有する医療人類学者のマイケル・リム・タン氏が同国の英字紙、デイリーインクワイアラーに10月14日、「Z世代フィーバー」と題したコラムを寄せた。その中で同氏は、「政治や社会問題には無関心だと思われがちなZ世代が、実は非常に社会的な関与を深めていることが明らかになっている」と、分析している。また、Z世代については「1997年から2012年ごろに生まれた、現在13歳から28歳ぐらいまでの人々を指す」とし、彼らは社会的・文化的に「デジタルネイティブ」であることなど、いくつかの共通点をもっていると指摘する。
さらに同氏は、Z世代が世界各地で巻き起こしている抗議行動について、アメリカ紙の分析を引用しながら「汚職と経済的な苦境が顕著であること、リーダーシップが緩やかであること、そして、日本のアニメキャラクターからとった海賊旗という共通のマスコットを掲げていることが共通している」と指摘。「こうした運動の多くは、例えばフィリピンの例に見る通り、必ずしも政府が倒されたわけではない。しかし、政府の指導者たちが事態の展開を注視し、神経をとがらせているという点では一致している」との見方を示したうえで、次のように問いかけている。
「政治活動は、まるで伝染病のように国から国へ広がる傾向がある。2010年から2012年にかけては、“アラブの春”がチュニジアやエジプトからイエメン、スーダン、リビア、シリアへと民主化運動として広がった。また、シリアの混乱は内戦へと発展し、血塗られたアサド政権は昨年ようやく倒された。Z世代は、意味のある持続的な変革がもたらされるまで十分な期間、若き理想主義を保つことができるだろうか。年長者の腐敗や無能さに追従するという誘惑に抗うことができるだろうか」
ネパール紙は来年3月の選挙戦を注視
フィリピン紙が懸念する「Z世代の持続性」について、ネパールの英字紙カトマンドゥポストは10月31日付の社説「氷は解けた。次はどうするか」で、次のような動きを伝えている。
ネパールでは9月、SNS禁止に端を発する若者による抗議行動が、政権転覆に発展した。しばらくはその後の展開が見通せなかったが、10月最終週、暫定政府と政党とZ世代の代表による初めての三者会談が実現したと社説は報じる。
社説によれば、三者は3月5日に実施が予定されている選挙を支持する姿勢を示した。「国が不確実な移行期にある今、投票箱を通じた解決策に勝る道はない」と社説は歓迎する一方、「公正な選挙が実現するためには、いくつもの懸念がある」と指摘する。なかでも大きな課題は治安の維持だという。また、選挙まで4カ月の間にZ世代グループが政党を結成し、信頼性のある形で選挙戦に加わることができるかも予断を許さないという。社説は「選挙のほかに道はない」としながらも、「関係者が対話を続けてこれらの懸念を解消していくことが肝要だ」と、説いている。
(原文)
フィリピン:
https://opinion.inquirer.net/186701/gen-z-fever
https://opinion.inquirer.net/186875/z-aspirations-z-asperations
ネパール:
https://kathmandupost.com/editorial/2025/10/31/ice-broken-what-next













