アフガン戦略の失敗で威信低下が進む米国
加速する内向き志向と2022年の針路を読む
- 2022/1/18
「世界の警察官」の行方
こうした責任問題や思いやりの必要性ゆえに2022年に解決すべきだとされているのが、米国の対タリバン制裁の緩和である。たとえば、アフガニスタンの首都カブールにあるアメリカン大学のオバイデュラ・バヒール教授は、11月2日付の『ワシントン・ポスト』紙で、「米国が凍結したアフガニスタン政府の何十億、何百億ドルの資産を解かなければ、アフガン人は絶望的な状況に陥る」と、強く訴えた。このような声は、今年、米メディアでさらに強まることが予想される。
翻って、アフガン難民に対して現れる強い責任感が、中国やロシアに対する政策では発揮されていないように思われる。
台湾の安全を脅かし、新疆ウイグル自治区でイスラム教徒に弾圧を強める中国に対して単なる外交ボイコットで事を済ませようとする宥和的政策や、ウクライナへの侵略的姿勢を強めるロシアに対して首脳会談や制裁でお茶を濁す弱腰外交が、その例だ。中露の反発を恐れるあまり、第2次世界大戦前夜にナチス=ドイツの勢力拡大を一定程度認めて平和を維持しようとした「チェンバレン英首相の対ヒトラー宥和」にならないだろうか。
また、米国民の互いの関わり合いにおける責任の取り方においても、相変わらずトランプ支持派を「民主主義の敵」として問題視するばかりで、彼らの経済的・社会的な苦境への思いやりや深い同情、原因の解決がおろそかになっているフシがある。内敵は、白人過激派ではなく、経済格差や社会不安を一向に解消できないリベラルエリートなのかも知れない。
こうした「外に対して宥和的、内に対して敵対的」な傾向にこそ、現在の米国の地位喪失が象徴されている観がある。そうした中、「世界の警察官」たる米国が、2022年に中国の台湾侵攻の脅しやロシアのウクライナ侵略危機に対して、アフガン撤兵時にしきりに言及された思いやりや深い同情を持って効率的に対処できるか、注目されよう。