中国をにらみ東南アジアで広がる外交の選択肢
フィリピンとベトナムの報道ぶりに見る新たな地域戦略
- 2026/7/13
フィリピンのマルコス大統領は5月末に日本を訪れ、高市首相らと会談した。続く6月1日には、フィリピンを訪れたベトナムのトー・ラム書記長兼国家主席と会談し、両国関係の強化を確認した。
これを受け、フィリピン紙は日本を「頼りになる同盟国」と評価し、ベトナム紙はフィリピンとの協力拡大に期待を寄せる。一見異なる二つの記事から見えてくるのは、中国との緊張を背景に、東南アジア諸国が地域内外のパートナーとの関係を広げようとする外交の動きだ。

戦略的パートナーシップの強化に関する共同声明に調印を交わしたフィリピンのマルコス大統領(右から2人目)は6月1日、ベトナムのトー・ラム書記長兼国家主席(左から2人目)(2026年6月1日撮影)© Government of the Philippines / wikimediacommons
日本を「頼りになる同盟国」と強調するフィリピン紙
フィリピンの英字紙デイリー・インクワイアラーは、6月3日付の社説「日本やベトナムとのより深いきずな」でこの問題を論じた。
冒社説は冒頭で「生活必需品の価格の高騰から、上院での破壊的な内紛に至るまで、憂鬱なニュースが相次ぐなか、日本やベトナムとの関係改善によって、大きな成果が得られたことが、まるで一陣の清々しい風のように感じられた」と評価した。
そのうえで社説は、日本との間で「2663億ペソに上る新規および拡大投資の確約を得た」ことに触れ、経済的な成果を強調する。ベトナムとの間でも、貿易や技術など幅広い分野で15件の協定が調印されたという。
ただ、これらの成果を上回る「外交的な成果の意義」として社説が評するのは、「この地域における同盟関係の戦略的な強化」である。社説はこれを「国際航行を脅かす南シナ海の領土侵犯や、経済成長を損なうほど激化している貿易戦争、中東情勢の混乱といった、困難な共通課題に立ち向かうためのもの」だとしている。
そのうえで、特に日本を「頼りになる同盟国」だと評する。その証として社説は、2026年にバリカタンで実施した軍事演習に、日本がオブザーバーとしてではなく、本格的に参加したことを挙げる。
「日本は、フィリピンを強制占領していた第二次世界大戦以来、初めて戦闘能力を持つ部隊をフィリピンに派遣した。これは、日本の軍事的な姿勢が抜本的に転換したことを示すものである。同時に、南シナ海における緊張が高まるなか、地域の安全保障を維持するうえでフィリピンが果たす役割の大きさと重要性を日本が認識していることを示している」。社説はこう指摘し、「かつて憎悪された帝国主義の侵略者であった日本」が今、いかに変貌を遂げたか指摘した。
ベトナム紙はフィリピンとの共通点をアピール
一方、ベトナム側は、今回のトー・ラム書記長兼国家主席のフィリピン訪問をどのようにとらえただろうか。ベトナムの英字紙ベトナムニューズは、フィリピンとベトナム関係について、フィリピンの元外務次官による解説記事を6月3日付で掲載した。
紙面に登場したのは、2007年から2009年までベトナム大使を務めた元外務次官のローラ・デル・ロサリオ氏である。同氏は、トー・ラム書記長兼国家主席のフィリピン訪問について、「きわめて重要であり、両国の強みを具体的な協力分野へと結び付けるうえで、大きなはずみになった」と評価した。
さらにロサリオ氏は、ベトナムとフィリピンには、経済発展や地政学的利益の面で多くの共通点があると指摘。両国とも中国やアメリカをはじめ主要国をめぐる動向を把握し、より広範な地域戦略・イニシアチブを発揮する必要があると指摘した。
報道によれば、ベトナムとフィリピンは南シナ海での中国との領有権問題を受け、国際法に基づく航行の自由の重要性を確認し、緊張を高める行為を自制するようすべての関係者に求めたという。南シナ海問題では足並みがそろわなかったASEANだが、中国に自制を求めるという点では利害が一致。今後、海上警備や人材育成でも協力していくという。
(原文)
フィリピン:
https://opinion.inquirer.net/192118/deeper-ties-with-japan-vietnam
ベトナム:












