月刊ドットワールドTV #22 振り返り 米中と中ロ、二つの首脳会談と中国の狙い
米中対立の、その先へ――中国が「バランサー」を目指す理由

  • 2026/6/27

 アメリカのトランプ大統領、そしてロシアのプーチン大統領―。今年5月、二人の首脳が相次いで中国・北京を訪問し、世界の注目を集めました。

 これらの会談は、一見すると、米中対立や中ロ連携をめぐる「大国同士の駆け引き」のようにも映ります。しかし、その舞台裏では、中国の外交戦略や台湾情勢、さらには日本の立ち位置にも変化の兆しが見え始めています。

 『月刊ドットワールドTV』#22(2026年6月26日21時~)では、中国情勢に詳しいジャーナリスト・福島香織さんをゲストに迎え、福島さんの論考「米中と中ロ、二つの首脳会談が示す中国の狙いとは」(2026年6月8日付)をもとに、相次ぐ首脳会談が示した国際秩序の変化と、多極化する世界の行方について語り合いました。

「勝ち負け」ではなく「時間稼ぎ」

 トランプ大統領と習近平国家主席による首脳会談は、「どちらが主導権を握ったのか」という視点で世界中から注目を集めました。

 しかし福島さんは、「今回の会談を勝敗で語るべきではない」と指摘します。

 アメリカは、中国を最大の戦略的競争相手と位置付けながらも、将来的な対立に備える時間を必要としています。一方、中国も経済や軍改革の停滞により、かつてのように覇権を急ぐ余裕がなく、体制維持を優先せざるを得ない状況にあります。

 そのため、双方に共通していたのは、「交渉」という形をとりながら、長期戦に向けた時間を稼ごうとする姿勢でした。今回の首脳会談は、そうした戦略転換を象徴していたと言えます。

台湾・民進党を率いる頼清徳総統© 總統府

 そのなかで、福島さんが最も懸念するのが台湾です。中国は、アメリカが台湾への武器売却を遅らせるだけでも、「アメリカは台湾を見放し始めた」という印象を台湾社会に与え、頼清徳政権への支持低下につなげようとしていると分析しました。

プーチン訪中が示した「新しい三角関係」

 トランプ大統領が北京を離れた直後、今度はロシアのプーチン大統領が中国を訪問しました。共同声明や協力文書への署名が行われ、「中ロ蜜月」が改めて強調されたようにも見える会談でしたが、福島さんはその見方だけでは十分ではないと言います。

 まずロシアについては、あえてアメリカの直後に訪中することで、自らも世界を動かす「大国」であることを世界に印象付けようとしていたと指摘。一方、中国も、アメリカとロシアの双方と関係を維持しながらそれぞれと交渉を続けることで、自国の影響力を最大化する狙いがあったと話しました。

レッドカーペットで歓迎されたプーチン大統領 (c) Russian Presidential Executive Office

 そのうえで福島さんは、かつてのように「二国が組んで一国と対峙する」という単純な構図ではなく、対立と協調を使い分けながら均衡を保とうとする、新しい三角関係が生まれつつあると指摘。さらに、ロシア・ウクライナ情勢やイラン問題などでも仲介役として存在感を示そうとする中国の姿勢は、「覇権国家」を目指すというより、「多極世界のバランサー」として振る舞おうとする現在の外交戦略を象徴していると続けました。     

多極化する世界で日本に求められる役割

  では、こうした世界の変化のなかで、日本はどのような役割を果たせるのでしょうか。

 福島さんは、日本には民主主義や技術力、経済力への信頼という強みがあり、多極化する国際社会のなかで「紛争を抑止するプレーヤー」として存在感を発揮できる可能性があると話します。そのうえで、「東南アジア諸国との安全保障協力や台湾との信頼関係など、日本だからこそ担える役割も少なくない」と続けました。

 一方で、8bitNewsの構さんからは、「安全保障の強化が、現地で暮らす市民への新たな圧力につながる可能性にも目を向ける必要がある」との指摘もありました。

 大国同士の駆け引きだけでなく、その影響を受ける人々の暮らしにまで視野を広げること。それもまた、ドットワールドが大切にしてきた視点です。

 詳しくは、ぜひ以下から番組をご視聴ください!

米中と中ロ、二つの首脳会談が示す中国の狙いとは 『月刊ドットワールドTV』

多様な視点に触れ世界をより立体的に見る

 一方で、大国の外交だけを追っていては見えてこない、多様な国や地域の視点に触れることによって、世界はより立体的に見えてきます

 番組では、米中首脳会談をめぐるインド、パキスタン、インドネシアなど各国メディアの報道ぶりのほか、2月にバングラデシュで実施された総選挙に対する少数民族ジュマのまなざし、イラン戦争に対するアメリカ世論の変化、ヨルダンで働くフィリピン人労働者、今年の世界報道写真展の模様など、新着記事も紹介しました。

 この日の放送は、国際政治が大きく揺れ動く今だからこそ、「現地から見た世界」に耳を傾ける大切さを改めて感じさせられる内容となりました。この日ご紹介した各記事は、以下の画像やリンクから飛べます。ぜひご一読ください。

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