バイデン米大統領候補の国際協調戦略を読む
トランプ外交の巻き戻し戦略は国民の支持を集めるか

  • 2020/8/20

安保の柱はNATOとパリ協定

 一方、軍事・安全保障面についてバイデン候補が打ち出すのは、米国が戦後、築き上げてきた同盟国との連携強化だ。トランプ大統領は金銭的な損得関係に基づき同盟関係を判断したが、バイデン候補は共通の価値観の有無を基準にしようとしている。これは、民主主義的な価値観にこそ協調の意義が見いだせるという同氏の信念から出ている。

 そんなバイデン候補が、歴史上、もっとも重要な軍事同盟だと位置付けているのが、北大西洋条約機構(NATO)である。同氏は、「NATOは米国安保の核心であり、リベラル民主主義の砦だ」と位置付け、「この歴史的な同盟を軍事的に回復・強化すると同時に、腐敗やサイバー犯罪、偽情報にも対抗できる同盟関係に変革する」と表明している。この基盤の上に、オーストラリアや日本、韓国、さらには中南米やアフリカの民主主義国家との軍事同盟を発展させ、中国と対抗するためにカギを握るインドやインドネシアとの関係も重視したいとの狙いだ。

 また、ロシアとは新たに戦略兵器削減条約 (START)を締結し、米露間の緊張を緩和させたいとする。また、トランプ大統領が破棄した多国間のイラン核合意についても、イランの遵守を条件に合意に復帰したいとの考えだ。

 他方、北朝鮮については「いまだ1基のミサイルも核兵器も破壊されず、査察も入っていない」として、トランプ大統領が進めた融和政策の結末を批判。「最終目標は完全な非核化だ」と述べ、「米国の同盟国や中国と多国間協力を進めながら実現したい」と語っている。さらに、韓国に駐留する米軍への費用負担の増額要求をはじめ、あからさまに韓国を疎んじたトランプ大統領の政策と一線を画し、米韓関係の修復を目指すと明言している点も注目される。

 このように、経済や安保面で多国間の国際協調枠組みの多用を打ち出すバイデン候補は、注目を集める環境政策についても、「大統領に就任したら、初日にパリ協定に復帰する」と公約する。2019年の世論調査では、78%の民主党員が環境問題を大きな脅威だと答えた一方、共和党員は23%にとどまった。しかし、バイデン氏は、オバマ政権下でパリ協定をまとめ上げた立役者の一人であり、思い入れは強い。

 そんな同氏は、二酸化炭素の主要排出国を集めて米国主導で環境サミットを開催し、パリ協定の目標達成の前倒しに向けて米国が世界をリードしたいとも意気込んでいる。「地球温暖化の防止策いついては、民主主義の仮想敵であり、貿易摩擦の相手国かつ軍事面で最強のライバルである中国とも緊密に協調できる」と、同氏は訴える。

オバマ2.0にはならない

 このように、トランプ大統領が多国間協調の枠組みを破壊したことによって米国の衰退が加速したと考えるバイデン候補は、国際協調の枠組みを復活させることで自国の安全保障や経済的な繁栄を確保しようとの方針を打ち出している。

 しかし、前述の通り、バイデン候補は、グローバル化を強調したオバマ前大統領の政策とは違ったニュアンスを出すだろう。世界は、脱グローバル化の方向に不可逆的に動いているからだ。

ジョー・バイデン米大統領候補と、副大統領候補に指名されたカマラ・ハリス上院議員(出典:同氏の選挙キャンペーンサイト https://joebiden.com/)

 また、バイデン候補はこのほど副大統領候補にカマラ・ハリス上院議員を指名した。移民の両親を持つハリス氏を前面に押し出すことで、移民や多文化に寛容な米国というイメージが高まり、外交上も得点になると、『ワシントン・ポスト』紙のコラムニスト、ジョッシュ・ローギン氏は高く評価している。

 11月の選挙では、この4年間に米国および世界で起きた激しい変動により上手く適応していると見られる候補が、米国民の支持を集めそうだ。

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